学校給食への有機農産物導入を

安定供給へ支援策の充実化必要

農林水産省は「みどりの食料システム戦略」を策定し、2022年には「みどりの食料システム法」を成立させ、持続可能な食料システムを構築を目指しています。みどりの食料システム戦略では、2050年までに耕地面積の25%(約100万ヘクタール)を有機農業に転換し、農薬の使用量をリスク換算で50%低減、化学肥料使用量を30%削減することを目標に掲げています。農薬や化学肥料の使用量が多い日本にとっては画期的な挑戦ですが、有機農業生産物の安定的な供給体制が未整備であるなどの課題があります。2023年3月の衆議院「地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会」で、有機農作物生産支援策の検討や、学校給食での導入推進を提案し、政府の姿勢をただしました。

有機農業、コスト面でも競争力

近年、化学肥料や農薬、燃料、農業資材の価格が世界的な情勢変化によって高騰しており、農業全体に多大な影響を与えています。このような中で、自然由来の堆肥や地域資源を活用した有機農業が、コスト面でも競争力を持つ可能性が高まり、大きな注目を集めています。有機農業は、地域で利用可能な廃菌床や河川敷の草、果樹園の剪定枝などの自然資源を活用することで、土壌改良や炭素貯留の効果を高めるとともに、低コストで持続可能な農業を実現します。

導入推進、地域で差 支援制度の拡充を

政府が挑戦的な目標を掲げている一方で、具体的な有機農業への支援策は不十分であり、多くの農家が有機農業への転換をためらっています。例えば、農林水産省が実施する環境保全型農業直接支払交付金では、有機農業に取り組む農家に10アール当たり1万2000円が支給されていますが、不十分です。

有機農業の促進には、より大胆なインセンティブの提供が必要です。例えば、果樹園の剪定枝や廃菌床を堆肥化する設備の整備支援、地域ぐるみでの有機農業推進を後押しするための資金援助、技術指導の充実などが考えられます。有機農業はコスト削減だけでなく、地域経済の活性化や雇用創出の可能性も秘めています。

学校給食での導入にも数値目標を

また、安定供給ができなければ生産の継続は困難です。このため、地域の農業と連携した学校給食での有機農産物導入を進める自治体もあります。地域農業の活性化しつつ子どもたちの食生活も改善することができ、新規就農者の増加や環境負荷の軽減にも期待されています。

学校給食における有機農産物の導入比率に関して、国際的には数値目標が掲げている国があります。日本でも国が主体となり、地域ごとの課題に応じて現実的な数値目標を設定し、段階的に引き上げる仕組みが必要です。自治体や学校関係者、農家との連携を強化し、有機農作物の生産と流通体制を整える支援を拡充するべきです。

さらに、栄養教諭や食育専門家と連携するなどし、子どもや保護者に有機農作物の意義や利点への理解を啓発する観点も重要です。現行の配置基準では、1人の栄養教諭が130学級を担当する状況もある中で、アレルギー対応や特別食の提供など業務が増加しており、十分な対応が困難となっています。食育の推進は、子どもたちが成長してからも持続可能な食料選択をするような文化を育むことにもつながります。

食料自給率 未達成続き

政府は、政府は食料自給率の向上を目指していますが、2005年以降、一度も目標を達成できていません。カロリーベースの自給率は40%に届かず停滞しており、2030年までに45%という現行目標の達成は危ぶまれています。湿害や連作障害といった生産障壁を克服するため、作付の団地化や排水対策技術の導入を進めてきました。小麦と大豆の生産量は一定増加していますが、依然として日本の食料自給率は先進国の中で最低水準です。政府は有機農業に取り組む地域を「オーガニックビレッジ」として推進しており、2025年までに100地区、2030年までに200地区創出する目標を掲げています。この取り組みを着実に進めつつ、全国的な有機給食の普及に向けた課題を明らかにし、必要な施策を講じるべきと考えます。

学校給食、全国一律で無償化を

また、物価高騰が家計に重くのしかかる中で、給食無償化への要望も高まっています。全国の自治体の約3割が独自に給食費の無償化を実現する中、負担に地域差が生じており、問題になっています。自治体間の格差を解消し、すべての子どもが公平に栄養を摂取できる環境を整えることが必要です。