アスベスト飛散防止 対策強化を

規制、支援体制が不十分

アスベストは、耐熱性や耐久性に優れ、かつて建材や製品として広く利用されてきました。しかし、アスベスト粉じんを吸引することで健康被害を引き起こすリスクがあり、使用は現在禁止されています。にもかかわらず、国土交通省の推計では、アスベストを含む建材が使用された建築物が約280万棟存在しており、その解体のピークが2028年頃と見込まれています。これらの建物が解体される際には、従事者や周辺住民にアスベスト飛散による健康被害のリスクが伴うため、未然防止策が求められています。

2021年に大気汚染防止法が改正され、アスベストを含む建材全てを規制対象に拡大した点は評価できますが、現在の対策では不十分です。解体前の事前調査や除去作業に関する規制や支援体制にも多くの課題が残されており、2023年4月4日の衆議院環境委員会で取り上げました。 

所有者罰則なし 規制が不十分

改正法では、一定規模以上の建物の解体工事において、アスベストの有無を確認する事前調査が義務化されました。しかし、この調査にかかる費用は木造二階建て・床面積約30坪の家屋で6万~17万円とされ、建物所有者にとって負担が大きいのが現状です。また、事前調査結果を報告しなかった元請業者には罰則が設けられていますが、調査自体を行わなかった所有者への罰則はなく、規制の網から漏れるケースが懸念されています。

さらに、危険度が高い「レベル1」建材の調査費用には一部補助制度が存在するものの、地方自治体による格差があり、補助が利用できない地域も少なくありません。危険度が比較的低い「レベル2」「レベル3」の建材については、調査費用の補助制度がないため、調査の実施が不十分な状況が続いています。このような格差は公共サービスの公平性に反し、住民の命と健康を守る観点から問題視されています。

事前調査、除去作業への支援拡充を

危険度に関係なく、全てのアスベスト建材に対して事前調査費用を補助する制度を全国的に導入すべきです。現在、レベル1の建材のみが対象となっている補助制度を、レベル2・3にも拡大することで、全ての解体工事における調査の徹底を図ります。

また改正法では、2023年10月以降、有資格者による調査が義務化されます。しかし、現時点で約12万人必要とされる有資格者のうち、養成済みは約9万人にとどまっています。資格取得支援策や教育機会の拡充により、必要人数を確保することが急務です。

地方自治体ごとの補助制度の有無が、建物所有者や事業者の負担に影響を及ぼしています。財源不足を理由に補助を行えない自治体には、国が財政支援を行い、全国どこでも公平に補助制度を利用できる体制を整えるべきです。アスベスト除去や特別な廃棄処理には多大な費用がかかります。これに対して、低利融資制度だけでなく、直接的な費用補助を拡充することで、所有者や事業者の負担を軽減し、適切な除去作業を推進する必要があると考えます。

アスベスト問題は過去のものではなく、今後の建築物解体のピークに向けて、迅速かつ適切な対応が求められます。全ての人々の健康と命を守るため、国として責任を持った対策を講じる必要があります。