里親制度の認知度向上が必要
委託率向上で子どもに「家庭的養育」環境を
日本では現在、約3万5000人の子どもが親とともに暮らすことができず、社会的養育の枠組みの中で生活しています。戦後、孤児を支援するために始まった制度は、現在ではDV、虐待、依存症、貧困など多様な要因から、親のもとで育つことができない子どもたちを支える仕組みとなっています。また、障害を持つ子どもたちの割合も増加しており、必要性が大きくなってきいます。社会的養育制度について、2022年2月4日の衆議院内閣委員会で質問しました。
里親等委託率20% 日本は世界的に低い水準
社会的養育が必要な子どもたちは、児童養護施設、乳児院、里親制度といった施設・家庭のいずれかで生活しています。平成22年度末から令和2年度末までの10年間で、里親制度の利用は毎年わずか1%ずつの増加にとどまっており、2020年度時点で里親等委託率は20%です。これに対し、オーストラリアでは里親委託率は約90%、アメリカでは80%、イギリスでは70%、ドイツ、フランス、イタリアでは約50%、韓国でも30%であり、日本の現状は著しく低い水準にあります。
愛着形成のため「家庭養育優先が原則」明記
2016年に改正された児童福祉法では、家庭養育優先原則が明記され、日本の社会的養育は、大規模施設から家庭的養育に方向転換を図っています。しかし、現実には里親制度は広がっておらず、施設での養育が主流となっています。施設での養育は交代制のため、子どもの愛着形成が十分になされないという問題があります。特に、幼少期から安定した家庭環境で育つことは重要であるにもかかわらず、里親への委託が遅れると、子どもにも里親にも大きな負担となると指摘されています。
目標達成ほど遠く
さらに、家庭養育優先の原則を進めるために策定された2017年の「新しい社会的養育ビジョン」では、3歳未満の子どもについては5年以内に75%、就学前の子どもについては7年以内に75%、学童期の子どもについては10年以内に50%の里親委託率を達成するとの目標が掲げられました。しかし、里親委託率は20%にとどまり、目標達成への道のりは依然として遠い状況です。
委託支援を行う職員の増員を
家庭的養育の拡充を進めるためには、まず里親制度の認知度向上と支援体制の充実が必要です。現在、政府は里親委託を推進するために自治体への補助金の増額や支援体制の強化を進めていますが、これだけでは不十分です。予算の増額はもちろんのこと、里親を開拓し、適切なマッチングを行うための専門職の配置や、委託後の支援を行う職員の増員も重要です。また、施設で働く職員に対する里親支援の訓練を強化し、より質の高い家庭的なケアが提供されるよう努める必要があります。
さらに、児童相談所の人員を増やし、予算を拡充することで、虐待予防や早期介入の体制を強化することが求められます。社会的な経済負担も無視できず、2012年に日本子ども家庭総合研究所が試算したところ、子ども虐待による社会的損失は年間1.6兆円に上るとされています。早期の介入と予防によって、このような経済的負担を削減し、子どもたちの健全な成長を支援することが、長期的には社会全体の利益に繋がると考えます。
政府には現場に対する予算の確保を徹底し、支援体制を拡充していくことを求めました。