健康保険証の存続を
マイナンバーカードとの併用を要望
日本は国民皆保険制度という、1961年から続く「誰一人取り残されない」理念に基づく医療制度を維持しています。しかし、政府はマイナンバーカードを健康保険証として一体化し、現行の健康保険証を廃止する方針を示しています。しかし、高齢者や障害者、引きこもりの方々など、マイナンバーカードの取得が困難な人々が多くの課題に直面する可能性が指摘されています。この問題について、2023年4月25日の衆議院「地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会」で問題提起しました。
取得困難者への対応が課題
医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は、医療の質向上や効率化をもたらす可能性がある一方で、現場では「誰一人取り残さない」仕組みが十分ではないことが明らかです。認知症や寝たきりの高齢者、意思確認が難しい障害者など、取得困難者への支援策について政府の説明には多くの不透明な部分が残っています。
政府は、マイナンバーカード取得の支援策として、出張申請や代理申請を用意し、カード取得を促進しようとしています。取得困難者がいる家庭や施設に職員が出向いて申請を行う出張申請の費用負担については、政府が国費で全額支援するとしていますが、現場では職員の人員不足や負担増が現実的な課題として残ります。
また、代理申請の範囲が限定的であり、日常生活自立支援事業を利用する方々に十分な支援が行き届いていないことも問題視されています。カードをどのように管理するのかなどの問題もあります。
制度変更で生じる負担には支援を
まず、マイナンバーカード取得困難者への対応策をさらに具体化する必要があります。認知症や判断能力が低下した方々の意思確認プロセスを簡略化し、代理申請の範囲を広げるべきです。また、出張申請に係る職員の増員や支援体制の強化が不可欠であり、そのための予算を確保することが求められます。
そして、健康保険証の存続またはマイナンバーカードとの併用を検討するべきです。特に高齢者施設や障害者支援施設では、マイナンバーカードを預かることへの不安が大きく、現行の保険証がもたらすシンプルな管理方法を残すことが現場の負担軽減に繋がります。
現行制度の変更により生じる新たな負担を国が適切に補助する仕組みが必要です。例えば、日常生活自立支援事業の利用者が負担する同行費用については、国費で全額負担する形に見直すべきです。
政府に対して意思確認が難しい取得困難者の具体的な人数や状況を正確に把握し、それを基にした現実的な施策を策定することも求めます。マイナンバーカードの普及は重要ですが、最も弱い立場にある人々を置き去りにしない配慮が不可欠です。
これらの提案は、国民一人ひとりが安心してデジタル社会の恩恵を受けられる環境を整えるためのものであり、今後の議論を通じて政府に具体的な対応を求めていきます。