外国籍DV被害者の保護を
ガイドラインの周知徹底を
日本のDV被害者支援制度では、外国籍被害者が直面する課題が見落とされています。外国籍の被害者がDV被害から逃れる際、在留資格の問題が大きな障害となっており、たとえば、被害者が配偶者からのDVを受けて別居や離婚した場合、在留資格を維持するのが困難で、母国に帰国せざるを得なくなるケースがあります。日本国籍の子どもと引き離されたり、母国に家族や仕事がない状況に置かれることがあります。人種差別撤廃条約委員会や女性差別撤廃条約委員会からも改善勧告が出されています。2023年5月10日の衆議院内閣委員会で取り上げました。
ウィシュマさん事件で問題浮き彫り
2021年に名古屋出入国在留管理局で発生したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの死亡事件は、在留資格がない外国人DV被害者への不十分な保護を浮き彫りにしました。この事件では、被害者が警察に助けを求めたにもかかわらず保護されず、入管施設に収容された後、適切な医療も受けられずに亡くなっています。
現在の制度では、外国籍DV被害者の在留資格の安定が十分に保証されていません。被害者が加害者である配偶者の協力を得られない場合、在留資格の更新や変更手続きが困難となり、結果として被害者がDV被害を耐え忍ぶしかない状況に陥っています。入管の対応についても、適切な保護が行われていない例が見られ、特にウィシュマさんの事件は制度の不備を象徴しています。
また、支援現場では、在留資格を失った被害者がDV防止法に基づく一時保護の対象となるにもかかわらず、その後の自立支援が見通せないことを理由に保護を断られるケースが多発しています。こうした状況は、DV防止法第23条に明記された「被害者の国籍や障害の有無を問わず人権を尊重する」という理念に反しており、早急な改善が必要です。
在留資格、柔軟な審査を
加害者である配偶者の協力を得られない外国籍被害者が在留資格の更新や変更手続きを行う際、柔軟な審査とするべきです。政府はこの点について、提出資料が一部不足する場合でも他の資料で対応し、所要の在留資格を付与する運用を行っていると説明しましたが、この運用の周知と実効性をさらに高める必要があります。
ウィシュマさんの事件を教訓に、在留資格の有無にかかわらずDV被害者を保護対象とする方針を基本計画や基本方針に明記すべきです。また、入管職員に対して、DV措置要領の内容を周知徹底し、実効性を確保するための研修をさらに充実させるべきです。
ガイドラインの周知徹底を
在留資格を失った外国籍被害者にも福祉的支援を提供できるよう、支援窓口に対する通知やガイドラインの周知を徹底する必要があります。これに加え、DV防止法第23条に「在留資格の有無にかかわらず」という文言を追加し、すべての被害者が人権を尊重され、安全を確保される仕組みを法的に明確化することを求めます。
矯正教育の充実化も重要
DV防止の観点から、少年院などの矯正教育において性暴力やDVに関するプログラムを必須化し、被害者にも加害者にもならない教育を提供することを提案します。たとえば、福岡県が実施している「生命の安全教育」を少年院でも導入し、受講者や職員が共に学ぶ場を設けることは意義深いと考えます。
これらの提案を通じて、外国籍DV被害者が適切な保護を受け、安心して生活できる環境を実現するための取り組みを進めていきます。