障害児教育支援 制度運用改善を
特別支援学校の寄宿舎 指導員の正規化を
2013年に制定された障害者差別解消法は、すべての人が障害の有無によらず相互に尊重し合い、共生する社会の実現を目指すものです。「特別支援学校の寄宿舎」と「特別支援教育就学奨励費」の運用は、この理念に基づき進められていますが改善が必要です。2023年6月15日の衆議院「地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会」で政府に訴えました。
寄宿舎指導員 計画的に採用を
文部科学省は「特別支援学校の寄宿舎」の役割について、基本的な生活技術の習得や金銭管理能力の育成、協力態度の涵養などを挙げ、障害のある子どもの支援を適切に行う必要性を認識しています。ただし、寄宿舎指導員の非正規率が高い自治体も多く、正規指導員の不足が安定性や専門性に課題をもたらしています。
例えば、福岡県では寄宿舎指導員の非正規率が53%、石川県では63%と高い水準にあり、子どもたちの信頼関係構築や専門的支援に支障をきたしています。また、指導員の勤務時間管理については、校長や教育委員会が責任を有するとされていますが、実態把握が十分に進んでいない状況です。
寄宿舎指導員の非正規率を引き下げるため、計画的な採用が必要です。自治体の責任で採用試験が実施される現行制度においても、文部科学省が全国的な非正規率や採用試験の実施状況を毎年度把握し、自治体に対して具体的な改善指針を示すべきです。また、ICTやタイムカードを活用し、勤務時間の適正な管理を徹底する必要があります。
特別支援教育就学奨励費にも課題
「特別支援教育就学奨励費」は、特別支援学校に通う児童生徒を対象に支給されるもので、現在、補助対象が徐々に拡大しています。しかし、特別支援学級に在籍する子どもの付添人費用が補助対象外となるなど、学級や学校種による補助の違いが存在します。これにより、経済的理由で修学旅行を諦めざるを得ない家庭もあります。
また、高等学校で使用する拡大教科書の費用負担も課題でしたが、2023年度から奨励費の対象に含めることが可能となり、自治体が負担すればその半額を国が補助する制度が導入されました。
奨励費の運用改善は進みつつあるものの、補助の一部が自治体の判断に委ねられているため、地域間で支援のばらつきが生じています。また、付添人費用の補助がない特別支援学級においては、保護者の経済的負担が依然として重いという問題もあります。
修学旅行における付添人費用も含めた補助制度の見直しが必要です。文部科学省は、特別支援学級の児童生徒が経済的理由で教育機会を逃さないよう、支援対象の拡充を検討すべきです。また、拡大教科書に関しては、全都道府県で統一的な無償提供が実現するよう、自治体への働きかけを強化し、必要な予算確保に努めるべきです。