在日米軍基地におけるPCB廃棄物の問題
地域に環境リスクの可能性も
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、強い毒性を持つ化学物質であり、1968年のカネミ油症事件でその危険性が広く認知されました。PCB廃棄物の適切な管理・処分は、国際的にも重要な環境保全課題です。2002年8月、米国防省は在日米軍基地内のPCB廃棄物を米国本国へ搬出し処理する方針を決定しました。この「2002年米国方針」により、基地内のPCB廃棄物は全てアメリカに持ち帰ることが約束されました。
しかし、その後の対応について、日本政府は在日米軍基地内のPCB保管量や処分状況を十分に把握していないことが判明しています。2022年末時点で、沖縄の米軍基地に5.3トン、全国の基地では計89トンのPCB廃棄物が残されており、日本政府が処理費用を肩代わりしている実態も報じられました。さらに、2018年度からの4年間で、全国のPCB廃棄物処理に要した総額は4900万円に達しています。在日米軍基地におけるPCB廃棄物の問題について、2023年11月10日の衆議院環境委員会で取り上げました。
地域に環境リスクの可能性も
米国が約束した「2002年米国方針」が十分に履行されていない現状は、人々の健康や環境への深刻なリスクをもたらす可能性があります。特に、米軍基地内で生活し働く人々、そして周辺地域に住む住民や発達段階にある子どもたちへの影響が懸念されます。
政府参考人によれば、2003年にPCB廃棄物約22トンが初めて米国に搬出されたものの、その後の進捗については不透明なままです。また、日本政府は在日米軍施設のPCB保管状況を十分に把握しておらず、処理費用の肩代わりについても法的根拠が疑問視されています。米軍基地のPCB管理が曖昧なままであることは、日本国内の法令や環境保護の原則に反するだけでなく、在日米軍の労働者や地域住民への安全確保にも重大な問題を引き起こします。
搬出・処理、米国に要望を
日本政府は、在日米軍基地内のPCB保管・処分状況を正確に調査し、透明性のある報告を行うべきです。また、米国に対し、2002年米国方針に基づき、すべてのPCB廃棄物を米国本国へ搬出・処理するよう強く求めるべきです。そのために、米軍基地への立ち入り調査を含む徹底的な環境調査を実施し、迅速かつ包括的な対策を講じる必要があります。さらに、日本政府が肩代わりした処理費用について、適切な精査と説明責任を果たすとともに、今後同様の事態が発生しないよう法的整備を進めるべきです。
加えて、国内のPCB廃棄物処理事業についても注視が必要です。日本国内における処理施設は、年内に北九州、大阪、豊田が、2025年度末に東京と北海道が閉鎖予定です。これ以上の延長は許されず、政府は立地自治体や地元住民との約束を守り、計画通りに処理事業を終了すべきです。処理施設の延長や不確実な対応は、地域住民の不安を招き、信頼を損なうことになります。