インクルーシブ教育の推進を

持続可能な開発目標(SDGs)の理念の1つに「誰一人取り残さない」があり、教育の分野ではインクルーシブ教育への注目が高まっています。インクルーシブ教育は、障害の有無を問わず、すべての子供が共に学び、成長する教育を目指す理念です。

日本政府は2019年に障害者権利条約を締結しましたが、2022年9月、国連障害者権利委員会から初めて総合所見が公表され、インクルーシブ教育政策の改善を勧告されました。同委員会は、通常学級における障害児支援の充実や教員研修の強化を求めていますが、日本政府は特別支援教育を維持する方針を示しています。

一方、通常学級で学びたい障害児やその保護者の希望が、現行の教育環境の制約によって制限される事例も多く報告されています。特に、支援員の不足や通常学級の過度な競争的環境が、インクルーシブ教育が妨げられている現状が指摘されています。

現状認識と問題意識

現在、日本では不登校やいじめ、自死といった深刻な問題も顕著に増えています。文部科学省のデータによれば、過去10年で小中学生の総数は約14%減少したにもかかわらず、不登校児童は約2倍に、いじめの認知件数は約5倍に増加しています。このような現象の背景には、過度に競争的な教育環境や、障害児を包摂する仕組みの不足があると考えられます。

通常学級では、支援員が配置されていない、または十分な数が確保されていないために、障害児が必要なサポートを受けられないケースが後を絶ちません。また、保護者が「迷惑をかけたくない」という理由で通常学級を諦める現状も問題です。さらに、特別支援教育を受ける子供の中には、社会がつくり出した障壁によって、本人の能力を十分に発揮できないケースも含まれています。

提案と具体的な方策

本来の豊かなインクルーシブ教育を実現するには、通常学級の在り方を根本的に見直す必要があると考えます。通常学級の規模を縮小し、教員研修を充実させることで、すべての教員が多様な児童を受け入れられるようにするべきです。また、特別支援教育支援員の数を大幅に増やし、授業中の合理的配慮や学習支援が円滑に行える体制を構築する必要があります。

障害児が希望する場合は、まず地域の通常学級への就学通知を出す制度を導入すべきです。自治体によっては既に実施している例もあり、政府としてもその効果を分析し、全国的に展開することを検討する必要があります。

現在、各地で地方財政措置された人数を超えて支援員が雇用されている状況です。地方交付税の拡充を図り、自治体が財政的負担を感じることなく必要な支援を行える仕組みを整えるべきです。

過度な競争的環境を改めるべき

過度な競争的環境を改め、子供たちがゆっくりと成長できる教育システムへの転換が必要です。インクルーシブ教育は、子供たちが他者との違いを尊重し合いながら学ぶ機会を提供するものであり、過度にストレスのかかる環境ではその意義を十分に果たせません。

教育はすべての子供たちにとって最も基本的な権利です。インクルーシブ教育を推進することは、共生社会の実現に向けた重要な一歩となります。政府には、障害児とその家族が直面する課題を十分に受け止め、大胆な政策転換を求めていきます。