赤ちゃん縁組の推進を

新生児の虐待死が深刻化

18歳未満の子どもの虐待死が深刻な問題となっています。特に、死亡する子どもの半数近くが0歳児であり、その中でも生まれたばかりの新生児の虐待死が最も多い実態があります。こうした背景から、特別養子縁組を前提とした新生児里親委託、いわゆる「赤ちゃん縁組」の制度普及が重要視されており、2022年3月4日の衆議院内閣委員会で政府に提案しました。

進まない乳幼児時期のの里親委託

乳幼児の里親委託は広がっておらず、特に0~3歳児の委託率はほとんど改善されていないのが現状です。乳児院に入所している子どもの数も10年間ほぼ変わっておらず、里親制度の普及と支援が急務です。

福岡県では、7年前から「赤ちゃん縁組」に取り組み、具体的なマニュアルを策定し県内の児童相談所に配布しています。望まない出産をした女性への支援が行われ、新生児遺棄や虐待の防止につながることが期待されています。

「赤ちゃん縁組」マニュアルを全国的に活用し、他の都道府県でも同様の施策を進めるべきです。出生後すぐに新しい家庭環境に引き取られることで、虐待のリスクは大幅に減少させることができます。また、児童相談所や産科医療機関との連携を強化し、支援体制を全国で確立することが必要です。

短期間の里親制度も必要

また、新生児期の子どもは、短期であっても里親家庭で育てられることで安定した環境で育つことができ、人格形成に良い影響を与えられるとされています。短期間の里親制度「赤ちゃん里親」も、現行の制度でもショートステイなどの仕組みを活用すれば、拡充することは可能です。

乳児院の機能転換と専従職員の配置を

乳児院の機能を転換し、赤ちゃん縁組や赤ちゃん里親の支援拠点としての役割を強化すべきです。乳児院に専従の里親支援職員を配置し、里親委託を推進する役割を担うことが必要です。現在、全国の乳児院における里親支援専任職員の配置状況は進展しているものの、さらなる支援体制の強化が求められます。

真実告知と出自を知る権利の法的保障を

また、子どものアイデンティティーを守るための「真実告知」や「出自を知る権利」も、社会的な理解が進んでおらず、日本ではまだ法的に出自を知る権利が保障されていないので、議論を進める必要があります。

 日本も批准している「子どもの権利条約」では、子ども実の親を知る権利が保障されているにもかかわらず、国内法ではまだ十分な法的保障がありません。出自を知る権利を法的に保障し、情報開示に関するガイドラインの整備、民間あっせん機関が事業を廃止した場合の記録の引き継ぎについても検討すべきです。

目標達成に向けた支援体制の充実を

2022年度を初年度とする「三歳未満児の里親委託率75%」という目標達成のためには、予算の確保と支援体制の強化が不可欠です。乳児院の支援職員の増員、児童相談所の体制強化、そして赤ちゃん縁組や里親制度の周知啓発を全国で一層推進する必要があります。最も多い0歳児の虐待死を防ぐために、早期に効果的な施策を実行すべきです。

政府、赤ちゃん里親 推進する方針

政府は、赤ちゃん縁組の推進に関して、「福岡県などの好事例を全国に横展開し、事例集を通じて周知する」としました。また、乳幼児短期里親委託(赤ちゃん里親)についても、里親育成の一環として推進していく方針を示しました。

乳児院の機能転換については、一部の施設で里親支援専従職員が配置されているが、今後も支援体制の強化を図るとのことです。また、「真実告知」や「出自を知る権利」については、既存の指針や法律に基づき、適切な支援を行う方針が示されました。政府は、今後も里親制度の充実に向けた施策を進めていくことを表明しました。