保育、幼児教育環境の改善を

支援体制の整備が不十分

保育士の不足や過酷な労働環境が深刻な問題となっており、保育と幼児教育の環境改善が喫緊の課題です。国立教育政策研究所が2020年に発表した「幼児教育・保育の国際比較」によれば、OECD諸国において、保育者の増員、給与の引き上げ、特別な支援を要する子供へのサポートが優先すべき投資分野とされています。しかし、日本では保育士の配置基準が先進国の中で非常に低い水準にあります。例えば、4、5歳児については、30人の子供に対し保育士1人という基準が設定されていますが、これはフランスの15人に保育士1人という基準の半分しかありません。

保育園や幼稚園での事故や子どもの置き去り事案も報告されており、安全対策の強化が求められています。国は、園外活動時における安全対策として、保育支援者の配置補助を行っていますが、企業主導型保育施設など一部施設には補助が適用されていません。保育、幼児教育への支援体制整備を、2022年5月11日の衆議院内閣委員会で訴えました。

保育士業務の過重労働解消が急務

保育士不足で業務の過重労働が問題となっています。保育士1人あたりの子どもの数が多すぎるため、日常的に一人一人に目が行き届かない状況が続いています。配置基準の見直しや保育士の待遇改善が行われなければ、事故や置き去りといった問題が続発し、保育の質の低下にもつながる恐れがあります。特別な支援を必要とする子どもたちに対するサポートも十分ではなく、現場では人手不足から障害児の受け入れを断念せざるを得ないケースが見られます。保護者は「行き場がない」と感じることが多く、保育環境の整備が急務です。

一方、保育施設の類型により補助や支援体制に違いがあることも課題です。認可保育所や認定こども園には補助金が充実していますが、企業主導型保育施設や認可外保育施設には十分な補助が行き届いていない現状があります。このため、施設の類型を問わず、共通の教育・保育基準を適用することが重要です。

配置基準の見直しを

保育の質を向上させるためには、まず保育士の配置基準を先進国並みに引き上げることが必要です。特に4、5歳児の配置基準を見直し、保育士1人あたりの子供の数を減らすことで、現場での事故防止や保育士の業務負担軽減を図るべきです。また、保育士の賃金を引き上げ、労働環境を改善することで、資格を持ちながら保育士として働かない人材の掘り起こしや、離職率の低下を目指します。

さらに、特別な支援を要する子供たちへのサポート体制を強化するために、加配の保育士の配置を促進し、必要な人員や財源を確保することが求められます。障害児の受け入れに対しては、地方交付税を拡充するだけでなく、各自治体に対して現行の補助制度を適切に周知し、施設が安心して障害児を受け入れられる体制を整えるべきです。

政府の具体策乏しく

政府は、保育士の配置基準改善については、財源の確保が課題であり、社会全体で費用負担の在り方を検討しながら進めていくとの立場を示しました。また、保育士の処遇改善に関しても一部加算措置を実施しており、企業主導型保育施設に対する補助の充実も進めているとしています。しかし、現状では十分な改善が進んでおらず、政府の対策では問題の解消には程遠いのが現状です。