4パーミルイニシアチブ推進を提案
土壌に炭素を閉じ込める技術
地球温暖化や気候変動が世界的な課題となっており、日本でも猛暑日や豪雨災害が頻発するなど、深刻な影響が出ています。日本の過去30年の猛暑日の平均は、1910年から30年間の平均の約3.3倍に増加しており、地球温暖化への対策は待ったなしの状況です。特に温室効果ガス、CO2の削減が重要とされていますが、そのための革新的な取り組みとして注目されているのが「4パーミルイニシアチブ」です。 2022年10月28日の衆議院環境委員会で取り上げました。
土壌に炭素を閉じ込める技術
4パーミルイニシアチブは、2015年のパリ協定のCOP21でフランス政府が提案し、現在、739の国や国際機関が参加しています。この取り組みは、土壌に含まれる炭素を毎年0.4%(千分の4)増加させることで、大気中のCO2を削減し、脱炭素を実現することを目指すものです。地球の土壌には1.5〜2兆トンの炭素が含まれており、その一部である表層部分には約9,000億トンの炭素があるとされており、これを少しずつ増やすことでCO2の排出を相殺することができます。
農業生産性も高める
この4パーミルイニシアチブにより、温暖化対策と同時に農業生産性の向上が期待できることが明らかになっています。例えば、堆肥やバイオ炭を使用することで、土壌に炭素を閉じ込めつつ、土壌の透水性や保水性を改善し、微生物の活性化を促進して作物の収量を増加させることができます。これは、地球環境に配慮しながらも生産性を高めるという、一石二鳥の効果がある重要な技術です。
さらに、政府は2021年に「みどりの食料システム戦略」を発表し、2050年までに有機農業の面積を全農地の25%に拡大するという目標を掲げました。この戦略は、持続可能な農業を推進し、同時に温室効果ガスの削減にも寄与するものです。しかし、4パーミルイニシアチブは十分に認知されていません。
山梨県で先進事例
山梨県の先進的な取り組みが注目されています。ブドウや桃などの果樹剪定枝を炭化してバイオ炭を作成し、これを農地に施用することで、炭素を土壌に貯留する取り組みを行っています。この「山梨方式」は、剪定枝をその場で無煙炭化器を使用してバイオ炭化する手法であり、土壌改良だけでなく温暖化対策にも効果的です。この方式は、コストが低く、誰でも簡単に実施できる技術であるため、全国的に普及させるべきです。
政府は、既に山梨県を含む複数の県でこのバイオ炭技術を支援しており、農林水産省の「みどりの食料システム戦略推進交付金」を活用して炭化器の導入を補助しています。この支援をさらに拡充し、他の都道府県にもこの技術を広めていくことが重要です。例えば、炭化器の補助金を全国的に提供すれば、地域ごとの特性に応じた環境負荷低減の取り組みを推進できると考えます。
発展途上国でも有効
また、バイオ炭技術は高価な設備を必要とせず、発展途上国でも導入しやすいことから、国際的な脱炭素支援策としても有望です。日本がこの技術を途上国に提供することで、世界的な温室効果ガス削減に貢献し、貧困問題の解決にもつながります。農林水産省は、既にアジア諸国における気候変動対策のためのワークショップを開催していますが、さらにこの取り組みを強化していくべきです。
この取り組みを国内外で推進するためには、農林水産省と環境省が連携し、協力して進めることが不可欠です。バイオ炭のような土壌貯留技術は、農業分野だけでなく、気候変動対策としても非常に重要であり、2050年までにカーボンニュートラルを実現するための切り札となると考えます。

