保育の質向上、保育士不足に対応を

「三党合意」の具体化求める

仕事と育児を両立でき、地域で安心して子育てできる保育環境の実現は、重要な課題です。幼児期の保育は生涯にわたり影響することがわかっており、保育の完全無償化、保育の質の向上、保育士不足への対応は、今後の日本社会の基盤を支えることにつながります。2025年4月16日の厚生労働委員会で、保育充実のための投資を政府に求めました。

環境省によるエコチル調査では、1歳未満から保育施設を利用していた子どもは、3歳まで家庭で育った子どもに比べて、3歳時点で発達が進んでいるという結果が示されました。調査対象は約4万人と大規模で、コミュニケーション能力、粗大運動、微細運動、問題解決能力、社会スキルなど5分野すべてにおいて、保育施設利用者の方が発達の遅れが少ない傾向が見られました。

幼児教育は生涯にわたり人生を左右

さらに、米国で実施された「ペリー幼児教育プロジェクト(PPP)」や「カロライナ幼児教育プロジェクト(ABC)」でも、幼児教育を受けた子どもは高校卒業率の向上や、将来の就業率、所得の上昇、犯罪率の低下など、長期的に社会的利益をもたらすことが確認されています。幼児教育が子どもの人生に与える影響の大きさを再認識させられます。

人的資本への投資をより効果的に行うためには、ゼロ歳から2歳の段階に重点的な支援を行うことが求められます。立憲民主党が強く訴えてきた「人への投資」は、この点を重視する政策です。ゼロ歳からの幼児教育・保育の負担軽減と支援の拡充については、自民党、公明党、日本維新の会の三党合意も得られており、政府は「令和8年度からの実施を念頭に、論点整理の上で成案を得る」との立場を示しました。早急に具体的な制度設計の提示を示し、実現への道筋を明らかにする必要があります。

保育園の経営安定サポートを

また、保育の量的整備が進んだ今、次に求められるのは質の向上ですが、保育園の経営安定が不可欠です。現行の公定価格制度では、定員割れが生じると直ちに収入が減少し、特に小規模保育園は経営が非常に不安定になります。

制度上、固定費も含めて子ども1人当たりで給付単価が決まるため、数名の定員割れでも大幅な赤字に陥ることがあります。こうした不安定な経営環境では、保育士の処遇改善や人員配置の充実も困難になります。

政府はこの点について、公定価格には固定費への配慮で小規模施設ほど単価が高く設定されているとし、2025年度予算では定員60人以下の保育所に対し、定員区分を10人単位から5人単位へと細分化する対応を実施したとしています。

これにより、実際の利用児童数が定員を下回った場合の給付費収入の減少幅が軽減される見込みです。しかし、少子化が進む中で保育体制を維持するためには、さらなる見直しと柔軟な支援策が不可欠です。

「超保育士不足」早急な対応必要

全国で保育士1人の採用枠に対し、応募が0.3人しか集まらないという「超保育士不足」の状況が続いており、保育の質そに直結する大きな問題です。最大の要因は賃金の低さであり、2023年時点で全産業平均が月額37万円に対し、保育士は32万円と約5万円の差があります。

この水準を早期に全産業平均以上に引き上げることが必要です。政府は2024年度補正予算において10.7%の処遇改善を行い、2025年度予算にも反映させたと説明しています。平均で月3万円を超える賃上げとなる見込みであり、2013年度以降の累計では約34%の処遇改善が行われているとしています。

しかし、依然として他職種との格差があります。政府は今後も保育士の処遇改善をこども未来戦略の中で継続的に位置づけるとしています。

保育は、単に子どもを預かるだけではなく、子どもの成長と発達、保護者の就労支援、社会の持続的発展に直結する極めて重要な社会基盤です。これらの視点を踏まえ、保育政策全体の再設計とさらなる充実を強く求めました。