進まぬ里親委託率 改善へ対策を

世田谷区「乳幼児短期緊急里親」で効果

親とともに暮らすことができない子どもは従来、施設で養育されてきました。しかし、大人と愛着関係を築くためには家庭的な環境で暮らす方が好ましいことから、2016年からは里親委託を原則とする方向に国は政策転換を図っています。

政府は2022年に3歳未満児の里親委託率を75%にする目標を掲げましたが、2024年3月末時点で26.9%と、目標に達していません。国は現在、計画を5年先送りし2029年までに75%を目指す目標に再設定しています。

里親委託が進まない背景について尋ねたところ、政府は「里親制度の周知が十分に進んでいない」「保護者の同意が得られにくい」「里親と児童との間のマッチングがうまくいっていない」などの背景があると分析しているということでした。里親委託の推進に向けた対策について、2025年 4月16日の厚生労働委員会で質問しました。

世田谷区では「乳幼児短期緊急里親事業」

国は、包括的な里親支援を行うため創設された「里親支援センター」の設置を促進し、自治体間ネットワーク会議で各自治体の課題の洗い出しや取り組み事例の横展開を行う、としています。

世田谷区では「乳幼児短期緊急里親事業」として、保護した乳幼児をすぐに里親家庭に委託するため、4家庭に月十万円の待機料を支払い、原則いつでも子供を迎えられるよう準備してもらうという取り組みを行っています。このような短期の里親をきっかけに、長期の里親や養子縁組につながっているということです。

政府「実施状況や課題を把握する」

政府に評価を尋ねたところ、「待機料として生じる一定の公費をどう考えるか、当該里親に求められる要件の検討など、国が制度化するに当たっては整理すべき課題も多くあり、今後、自治体から聞き取りなどを行って実施状況や課題を把握したい」と回答がありました。

子どもが小さいうちに支援を

生後3年間には脳内の細胞の結合が爆発的に増殖し、子どもは目覚めている事実上全ての瞬間に新しい事項を発見していると言われます。必要なケアがなければ、脳の発達が損なわれるおそれがあるということです。人的資本への投資はとにかく子どもが小さいうちに行うことが有効です。子どもが信頼できる大人と愛着関係を築きやすいよう、家庭的な環境で暮らせる保障を政府には求めました。