2019年 9月24日:DV被害者支援の拡充について
福岡県議会一般質問
DV被害者支援の拡充について、3点知事にお聞きします。
2001年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」、いわゆるDV防止法が制定されてから18年が経過し、この問題に対する一般の理解も進み、家庭内に隠されていた被害が徐々に顕在化するようになってきました。
この間、全国の「配偶者暴力相談支援センター」に寄せられる相談件数は、2002年度以降年々増加し、2014年度からは4年連続で年間10万件を超えるなど、高止まりの状況にあります。
また、2004年に、児童虐待防止法が改正され、子どもの目の前で配偶者や家族に対して暴力をふるう、「面前DV」が、子どもへの心理的虐待のひとつに認定されました。
警察から児童相談所への児童虐待通告数もまた、年々増加していますが、中でもこの面前DVの被害は、全通告数のうち約半分を占めるようになってきています。
そこでまず、1点目に、直接的に暴力を受けなくても、DV を見聞きして育つ子どもは心身に傷を負い、成長後もフラッシュバックに苦しむなどPTSDを発症することが少なくないと言われていますが、「面前DV」を含めたDVと児童虐待との関連について、知事は、どのように認識しているのか、お聞きします。
その上で、DVと児童虐待とが同時並行的に生じている事例について、県はどのような対応を行なっているのかお聞きします。
○知事の回答
・DVが起きている家庭では、子どもも暴力や暴言などの虐待を受けているケースも見られる。また、子どもの目の前で行われる「面前DV」は、子どもが暴力を目撃することによって、子どもの成長と人格形成に深刻な影響を与えるものであり、DV被害者とどの子どもの双方の安全を早急に確認することが重要である。
・このため、女性相談所や各保健福祉環境事務所に設置している配偶者暴力相談支援センターでのDV相談において、子どもへの虐待が疑われる場合は、児童相談所や市町村の福祉部局と連携し、子どもの安全を確認している。特に、緊急に安全を確保する必要がある場合は、女性相談所等においてDV被害者と子どもを一緒に保護している。
を一緒に保護している
2点目に、DV民間シェルターへの財政支援についてです。
内閣府男女共同参画局が本年5月に公表した「DV等の被害者のための民間シェルター等に対する支援の在り方に関する検討会」による報告書には、「DV被害者が、配偶者などからの暴力から逃れ、自立の道を進む上で、支援者や支援機関の存在は欠かせないものです。なかでも民間シェルターは、先駆性、柔軟性、地域性、専門性等の強みを有し、地域社会における不可欠な資源として重要な役割を担っている」と記されています。
そこで、本県には民間シェルターが数カ所あると聞いていますが、本県における民間シェルターの役割について、どのように認識しているのかお聞きします。
また、民間シェルターの多くは、外国籍や若年女性に対する支援、子ども向けプログラムなど、被害者と同伴する子どもの自己決定権を尊重しつつ、丁寧な支援を行なっているものの、共通して財政基盤が脆弱で、その運営は支援者の熱意と善意によって支えられているのが現状であると聞いています。
同じく、内閣府男女共同参画局が本年5月に公表した「DV等の被害者のための民間シェルター等に関するアンケート調査」によれば、問題や課題の解決にあたり障害となっているものについて、「財政不足」を挙げる施設が6割と最も多く、人材の高齢化などにより閉鎖を余儀なくされたり、「あと数年で、20年以上にわたる現場のノウハウの蓄積が後継できずに、消失してしまう」という悲痛な現状を訴える声も上がっているとのことです。民間シェルターの運営は、もはや支援者の熱意、ボランティア精神だけでは限界にきているのではないでしょうか。
そこで、管内に民間シェルターが存在する34都道府県のうち、19カ所、半数以上の都道府県が民間シェルターに対して、家賃など運営費に対して支援するなど何らかの財政支援を行なっており、本県としても早急に財政的な支援を始めるべきと考えますが、知事の考えをお聞かせください。
○知事の回答
・県では、DV被害者の一時保護に当たっては、被害者本人の状況、同伴家族の有無、地域等を勘案し、女性相談所や社会福祉施設のほか、必要に応じて、民間団体が運営する緊急避難施設、いわゆる民間シェルターに一時保護を委託している。民間シェルターを運営する団体は、その専門性を生かして、民間による支援を希望する女性の一時保護や外国人女性に対する相談といったDV被害者支援に主体的に取り組んでおられ、重要な役割を果たしている。
・こうした民間シェルターを運営に対して財政支援を行うことについては、県が実施している一時保護委託件数が少ないことに加え、独自に実施されている公的関与がないDV被害者への相談、保護、自立支援といった活動の実態を把握することが難しいという課題がある。
・このため、現在、国において、民間シェルターの先進的な取組みに対する支援策を検討するための実態調査が行われており、県としましては、こうした国の状況を注視してまいる。
3点目に、DV、ストーカー行為、児童虐待などの被害者およびその家族の個人情報の加害者への漏洩防止についてです。
新聞報道によれば、徳島市は、今月6日、DVに準ずる被害に遭ったとして、住民票の写しの交付などを制限している女性の住所が記された書類を、加害者とされる母親に誤って送付するミスがあったと発表しました。女性は転居を余儀なくされ、徳島市はその費用などを負担し、女性に謝罪したとのことです。
被害者や家族の個人情報が、行政機関から加害者に誤って伝わるという事案はこれまでも度々生じており、総務省は、本年6月27日に各都道府県に通知を発出し、DV、ストーカー行為、児童虐待などの被害者の保護のため、市町村の事務の適正化を図るよう求めています。
また、現住所が記載されない戸籍謄本の写しの交付についても運用を慎重にし、加害者から請求があった場合は請求理由を問えるようにしている自治体があると聞いています。
DVだけでなく、ストーカー行為や児童虐待などの被害者や家族が加害者から逃げて生活しているケースなどでは、個人情報が漏洩して現住所を特定されるのは極めて危険で、命に関わる事態になりかねません。
そこで、県として改めて市町村における加害者への漏洩防止についてどのような対応がとられているのかを把握した上で、対応の徹底を求めるべきと考えますが、知事の考えをお聞きします。
○知事の回答
・加害者による被害者の住所の探索を防止し、被害者の保護を図るため、総務省令に基づき、すべての市町村において、被害者からの申し出により、本人以外には住民基本台帳の閲覧、住民票や戸籍の附票の写しの交付を制限する取扱いを行なっている。
・また、市町村では、住民税の賦課徴収など、住民基本台帳の情報を使用する部署が、誤って加害者に対してDV被害者の現住所などの情報を伝えることがないよう、住民税など各システム画面での警告表示や、申し出者のリストの情報共有といった対応を行っており、一部の市町村においては、住居表示のない戸籍謄本の交付においても慎重な取扱いをしている。
・さらに、県の働きかけにより、現在40の市町村では、DV対策関係部署による「庁内連絡会議」を設置し、情報保護の徹底を求めてきたところである。今後も、こうした取組みに加え、すべての市町村でDV対策関係部署による「庁内連絡会議」が設置されるよう、未設置の市町村に対して働きかけてまいる。
○堤かなめによる要望
児童虐待については、深刻な人権侵害としてマスメディアでも頻繁に報道されるようになりました。しかし、児童虐待の背後にDVが潜んでいるということや、面前DVが子どもに及ぼす悪影響については、まだまだ認識が広がっていないように思います。
アメリカ司法省の発表によれば、暴力のある家庭の子どもたちが虐待にあう確率は、問題のない家庭の子どもに比べ16倍も高くなるとのことです1。日本での状況については、綿密な調査が待たれるところですが、おそらく同様の状況にあることが推察され、虐待から子どもたちを守るためには、より根本的な問題であるDVの根絶こそが重要であると考えます。
知事におかれましては、DV民間シェルターなどのDV被害者の支援に長年にわたり地道にコツコツ取り組んできた民間団体と、より緊密な連携を図りつつ、DV根絶により一層力を注いでくださいますよう要望し、私の一般質問を終わります。