2020年12月10日:福岡空港における米軍基地と土壌汚染について

福岡県議会一般質問

皆さま、こんにちは。民主県政クラブ県議団の堤かなめです。

はじめに、福岡空港における米軍基地と土壌汚染について質問します。

 福岡空港は都心部に近く、利便性という点では、国内でも世界的に見ても有数の空港であります。その一方、空港周辺に多くの住民が暮らしておられ、騒音や振動などの課題や安全面の懸念があることも事実です。

我が会派は、昨年2月定例会の代表質問において小池邦弘元議員が、騒音問題について知事に質問しました。知事からは、県として福岡空港について、測定に最も適した地点を選定し、年間を通じて騒音を測定していること、あわせて、この常時測定を補完するため、関係市町村と連携し17地点で1週間から2週間程度の短期測定を行なっていること、さらに福岡空港を管轄する国土交通省大阪航空局に対して、毎年度、測定結果を通知するとともに、今後とも、一層の騒音対策を求めていく、との答弁を得ました。

また、昨年12月定例会の代表質問では、わが会派の原田博史議員が、日米地位協定に対する認識とあるべき姿について質問しました。知事は、日米地位協定は、国家・国民の安全保障に関わる問題であるため、国において適切に判断されるものであること、締結以来一度も改定されておらず、米軍基地に起因する問題を抜本的に解決するためには改定が必要であり、全国知事会及び渉外知事会を通じて、国に対し改定を求めていく旨を答弁されました。

 そこで、今回は、先般、福岡空港の滑走路増設工事に伴って土壌汚染が確認されたとの報道がなされたことから、土壌汚染の問題に絞って質問いたします。

ご案内の通り、長年にわたる米軍基地返還運動の結果、1972年(昭和47年)、運輸省(現 国土交通省)所管の福岡空港発足に伴い、板付飛行場及び隣接山間部の大部分が返還され、現在では、板付基地の約95パーセントが返還されています。その後も、福岡市議会、自治協議会をはじめとする地域団体、県、市、その他各種団体で構成されている板付基地返還促進協議会が、市民生活と福岡空港の安全確保を図るため、基地の全面返還を目指して活動を行っておられますが、戦後75年が経った今も、残念ながら、全面返還には至っておりません。

したがって、福岡空港は、現在でも、米軍板付基地としても使用されており、防衛省が2017年から2019年に、国土交通省が2018年に行った調査によると、汚染物質は、返還された米軍基地跡地から、ベンゼンが国の基準値の最大23倍、鉛が同じく3.1倍も検出されました。米軍基地との因果関係が明確に立証されたわけではないものの、汚染の原因は、過去に使用されていた燃料等が疑われるとのことです。土壌汚染による地下水汚染、周辺の動植物への影響などの風評が広がれば、住民の不安につながりかねず、早期の汚染物質の除去が必要であると考えます。

そこで、米軍基地問題と土壌汚染について4点質問します。

1点目に、現行の日米地位協定に従えば、たとえ米軍基地との関連が疑われるような土壌汚染が発覚したとしても米軍に原状回復義務はなく、国が原状回復を行うのが通例となっています。そこでまず、昨年12月定例会終了後、日米地位協定改定について、どのように行動されてきたのかお示しください。

*知事の答弁*

○県では、昨年12月議会以降も、全国知事会を通じて、日米地位協定の抜本的な見直しに積極的に取り組むよう、国への要望を続けているところである。

○また、本県も含め、基地を抱える都道府県で構成する「渉外関係主要都道府県知事連絡協議会(渉外知事会)」としても、国に対し、国内法適用の拡充など、日米地位協定の改定を求めてきているところである。

○本県としては、全国知事会及び渉外知事会を通じ、引き続き、国に対し、日米地位協定の改定を求めてまいる。

2点目に、今回明らかになった土壌汚染という事実に対し、どのような見解を持たれたのかお聞きします。

*知事の答弁*

○福岡空港の滑走路増設事業を進める中で、国土交通省等が土壌汚染対策法に基づき土壌調査を行なっている。昨年度までに調査を行なった約7万平方メートルのうち、1500平方メートルの区域から、特定有害物質であるベンゼンと鉛が、同法の基準値を超えて検出された。

○同法に基づいて、国土交通省等から調査結果の報告を受け、確認を行なった福岡市からは、「土壌汚染が確認された区域において地下水汚染は確認されていないことから、今回判明した土壌汚染に起因する周辺地域への健康被害は現在までのところ生じていないと認識している。」と聞いている。また、国による汚染土壌の掘削除去等の対策も進められていることから、今回の土壌汚染への対応は、法律に基づき、適切に行われているものを考えている。

3点目に、今回判明した汚染土の除去と原状回復はどのように行われるのか、その方法といつまでに終了する予定なのか伺います。また、その費用は総額1,600億円程度といわれる滑走路増設事業の予算の内数であり、具体的な費用は不明です。費用の見込み、及び県と地元福岡市の負担がどうなるのかお示しください。

*知事の答弁*

○今回判明した汚染土壌については、拡散防止の措置を講じながら掘削除去等が行われている。昨年度からはこれまでに、1200平方メートルの区域の土壌が除去され、それに要した経費は、5億1600万円余である。

○また、残りの300平方メートルの区域の土壌についても、令和4年度末までに除去を行う予定で、その所要額は、現在、工法等を検討していることから、未確定であると国から聞いている。

○なお、県と福岡市の負担につきましては、滑走路増設事業の一環として実施されることから、空港法第6条及び第7条に基づき、両者で汚染土壌の除去に必要な事業費の3分の1を負担することになる。

4点目に、汚染土の除去と原状回復は、滑走路増設事業の一環として国土交通省が行いますが、国内法に縛られない米軍が、今後も空港を基地として継続使用していけば、再び汚染の可能性があることも否定できません。そこで、周辺住民の不安払拭のためにも、福岡空港の環境管理を適切に行っていくことが不可欠であると考えますが、知事の方針をお示しください。

*知事の答弁*

○周辺住民の皆さまに空港の土壌汚染への不安感を払拭してもらうためには、土壌調査の結果などの情報を適切に提供することが必要だと考えている。県としましては、空港の設置者である国に対して、土壌汚染対策法に基づく必要な調査や対策を適切に行い、その結果や対応状況について、周辺の地域住民の皆さまに説明するなど、丁寧な対応を求めてまいる