2021年 3月18日:学校における働き方改革の推進について
民主県政クラブの堤かなめでございます。学校における働き方改革の推進について質問いたします。
1966年に当時の文部省が行なった調査では、教員の1ヶ月の平均残業時間は約8時間でした。およそ50年前には、先生方はほとんど残業していなかったということです。しかし、1980年代から徐々に業務量が増え、2000年代に入って多忙化に拍車がかかったと言われています。そして、およそ2年前、2019年1月29日、文部科学大臣は、学校における働き方改革についてメッセージを出されています。この文科大臣メッセージの一部を紹介させていただきます。「今、学校現場では、教師の長時間勤務の深刻な実態があり、働き方改革は待ったなしの状況です。「子供たちのため」を合言葉に、これまで志ある教師たちがその使命感から、様々な社会の要請に応えてきましたが、過労死に至ってしまうような痛ましい事態もあり、ここで教師の働き方を変えねばなりません。」というものです。私も、まさしく、待ったなしの状況だと思います。
問1 そこで、はじめに働き方改革の必要性や緊要性について、県教育委員会としてはどのように考えておられるのかお聞きします。
[答]学校の役割は、与えられた人的資源と時間の中で、教員の専門性を生かしつつ、児童生徒の心身の成長を最大限に引き上げることである。そのためには、これを担う教員の活力や熱意、愛情を最大限発揮できる環境を整えることが必要であり、超過勤務によって教員が疲弊していたのでは望むべくもない。本来の学校の役割を果たすためにも働き方改革を早急に進める必要がある。
私も、現場の教員の方々の、溢れんばかりの活力や熱意、愛情、まさに塩川委員のような先生方に対して、心から敬意を抱いております。そのような先生方が存分に力を発揮できる環境を整えなければならないということに全く同感です。では、教育現場の超過勤務、いわゆる残業の状況について、お聞きしたいと思います。
厚生労働省は「残業が月80時間を超える状態が続く場合、心疾患や精神疾患による過労死の危険性が高くなる」としています。
県立学校については、城戸教育長が2018年9月定例会において、「ひと月当たりの超過勤務時間が80時間を超えるものが生じないことを目指しており、できるかぎり早期に実現できるよう働き方改革の取り組みを推進」すると答弁されています。
問2 そこで、「80時間以上の残業」が教職員の方々に及ぼす影響について、県教育委員会としてどのように考えているのか、お聞きします。その上で、県立学校について、2年半前に「80時間以上の残業をできる限り早期になくす」とご答弁されていますが、直近の状況と今後の見込みをお聞きします。
[答]月80時間以上を超える時間外労働が続く場合には、脳・心臓疾患やメンタルの不調につながるおそれがあるものと認識している。昨年11月から今年の1月までの3ヶ月では、月80時間を超える者は平均的4.4%。これに対し、前年同時期の3ヶ月平均は6.8%。各学校における意識改革と仕事の平準化の取り組みにより、他の期間でも着実に減少しており、今後は、統合型校務支援システム等の運用により早急な解消を目指したい。
1日も早く80時間を超える残業をゼロにしていただくことを強く要望しておきます。
問3 次に、新型コロナウィルス感染症予防の対応業務が加わって一段と多忙になっているという声が上がっていますが、市町村立小中学校の残業の状況についてはどうなっているのでしょうか、お聞かせください。
[答]県教育委員会では、毎年7月に市町村立学校における働き方改革の取り組み状況を調査しているが、昨年度1年間の勤務時間を把握できている市町村が少ないということもあり、調査項目には入れていない。また、現在、教員の出勤時刻・退校時刻を記録していても、これを集計するシステムがない市町村も多いため、今後、市町村教育委員会とも協議した上で超過勤務の具体的な状況の把握に努めたい。
「勤務時間を把握できている市町村が少ない」「記録していても集計するシステムがない市町村が多い」とのお答えで、正直なところ驚いています。
問4 学校における働き方改革が叫ばれてどれだけの年月が経過したのでしょうか、そして、この間、市町村教育委員会にどのような働きかけをされたのか、お答えください。
[答]教員の勤務時間について客観的に把握しなければならないことが法令に明記されたのは平成30年(2018年)9月であり、これを受けて令和元年度(2019年)の途中から把握を始めた市町村が多いため、まだ1年度分の把握ができているところが少ない状況。県教育委員会では、最優先で進める方策として勤務時間の把握を繰り返し指導してきたところである。
法令に明記されてからは、確かに2年半しか経っていないかもしれません。しかし、7年前には、OECD国際教員指導環境調査(TALIS)によって、日本における小中学校教諭の勤務時間が突出して長時間となっていることが明らかとなっています。そして、そのもっと以前から現場からの悲痛な声が届いていたのではないでしょうか。県教育委員会の取り組みの遅れを指摘せざるを得ません。
問5 では、市町村立小中学校においては、勤務時間をどのように把握しているのか、具体的にお答えいただきたいと思います。
[答]本年2月末時点で、勤務時間の把握ができている市町村は、57市町村。4月から実施予定は2市町村。57市町村のうち、ICカード等を導入しているのは29市町村。
ICカード等を導入している市町村が29、およそ半数にとどまっているということですね。ご案内の通り、労働基準法により、使用者は、労働時間を適正に把握し、適正に管理する責務を有しています。
問6 そこで、県教育委員会は、市町村の半数しか適正に労働時間を把握できていないという現状について、どう認識しているのかお答えください。
[答]勤務時間を客観的な方法で適正に把握することは、超過勤務の改善を進めるために必要不可欠な取り組みである。このため、市町村教育委員会に対しては、自己申告や自己入力等によらず、より正確で簡便な仕組みとなるよう、働きかけを行ってまいる。
ぜひぜひ早期に、市町村の全てで客観的な把握がなされるようお願いいたします。さて、残念なことですが、勤務時間管理のためにICカード等が導入されていても、現場の教職員からは、「終業時間に打刻して、それからまた勤務している」「土日に勤務してもI Cカードに打刻しにくい雰囲気がある」などという、声があります。
問7 そこで、県教育委員会としては、そのような不正についてどのように考えているのか。その上で、虚偽や不正をなくすためにどのような取り組みをするのかお聞きします。
[答]勤務時間の正確な記録は、勤務時間管理の基本であり、不正な打刻は制度の根幹を揺るがすものであることから、特に管理職がこれを命ずるようなことは決して許されるものではない。今後もあらゆる機会を捉えて正確な打刻を意識付けるチラシを作成する予定である。
「チラシを作成」されるとのこと、一歩前進だと思います。
問8 しかし、もし万一市町村立学校で不正打刻などがあった時はどうするのでしょうか。服務監督権者は市町村教育委員会でありますが、任命権者は県教育委員会なのですから、厳正に対処すべきと考えますが、いかがでしょうか?
[答]市町村学校において管理職が不正打刻を命ずるような重大な不正があった場合には、服務監督権者である市町村教育委員会における調査とその内申を待って処分を検討することとなる。
そのような対応では不正がなくなるとは到底思えません。現実には、管理職があからさまに不正を命じるということはほとんどありません。管理職から「残業せずに早く帰ろ」と言われても、それでは仕事が終わらない、それで仕方なく、打刻してから残って仕事をする、あるいは家に持ち帰って仕事をする、そんな状況があるのではないでしょうか。抜本的に残業を削減するには、業務内容自体を厳選して絞り込むか、あるいは教職員の増員が必要です。教職員が不正に打刻をせざるを得ないような状況を根本的に解決する、そういう取り組みを強く要望いたします。
さて、国は、2019年(平成31年)1月にガイドラインの中で、残業の上限を「月45時間、年360時間」と定めていますが、
問9 2年前に定めたこの目標を、いつまでに、どのように達成するのかお答えください。
[答]県立学校における教員の超過勤務については、平成31年1月から12月までの1年間で472時間、月平均39.3時間。令和2年1月から12月までは、コロナ禍もあったが、年383時間、月31.9時間。統合型校務支援システムにより120時間が削減されると、360時間を下回ることは十分に可能であると考える。来年度から本格稼働するシステムを着実に運用することで段階的に削減しつつ、データの移行や学年間の引き継ぎが完了する4年目には360時間以内となるよう、万全を期したい。
お答えは、あくまでも平均の数値です。ガイドラインの目標値は個々人の上限です。また、このシステムを導入すると、しばらくはかえって混乱し業務量が増える、そもそも使い勝手が悪いという声もありますので、お伝えしておきます。
いずれにしましても、市町村立小中学校を含め、教職員の全員が、「月45時間、年360時間」以内の残業時間に収まるよう、早期の対策を求めます。
問10 最後に、私と同い年で、あと十数日で退職を迎えられます木原副教育長に、学校における働き方改革の実現に向けて、決意と想いをお伺いします。
[答]本県における学校の働き方改革の目的は、教職員が健康でやりがいを持って働くことができる環境を整備することであり、また、このことを通じて、「教職員が子どもと向き合う時間」を十分に確保し、学習指導・生徒指導の充実により、学校教育の質を維持・向上させることでございます。教育の最前線である学校現場において、この目的が達成できるよう、県教育委員会としても引き続き働き方改革の推進に取り組んでまいります。
長年にわたり、教育行政の推進にご尽力いただき感謝申し上げます。その想いを後輩の方々に引き継いでいただきますようお願い申し上げますとともに、新たな場でさらにご活躍されますことを心より祈念申し上げ、私の質問を終わります。