2024年 5月17日:年金の安心と財源確保、食品健康被害の救済

第213回国会 衆議院 厚生労働委員会 第20号

○堤委員 立憲民主党の堤かなめです。  初めに、年金の安心と財源確保についてお聞きします。  今、様々なメディアなどで老後破産が取り上げられています。大臣、老後破産についてどういう御見解をお持ちでしょうか。

○武見国務大臣 老後破産という言葉自体は聞いたことがございます、厳密な定義というのはまだないだろうというふうに思いますが。あわせて、老後の年金生活への不安の声があるということは承知しております。

○堤委員 破産する人の四人に一人が六十歳以上の御高齢の方だといった推計もございます。この点、今、我が党の西村智奈美委員の方からも、単身高齢女性の本当に厳しい状況が、経済的に厳しいというお話もありましたので、今、本当に公的な年金だけでは生活ができない、年金を受け取れる年齢が七十歳まで引き上げられてしまうのではないかなど、老後の生活に不安を感じておられる方が多くいらっしゃいます。  二〇〇四年に、自公政権は、百年安心年金プランとして、百年後でも絶対大丈夫と国民に明言いたしました。厚労大臣、年金は本当に百年安心できるのでしょうか、それとも、百年安心年金は撤回されるのでしょうか。

○武見国務大臣 公的年金制度におきまして、二〇〇四年の年金制度改正において、将来の現役世代の過重な負担を回避するという観点から、保険料の上限を固定した上で、マクロ経済スライドによりその収入の範囲内で給付をし、おおよそ百年間の長期的な給付と負担のバランスを確保することで、将来にわたって持続可能な仕組みとしております。こうした考え方は現在でも変わっていないということは明確に申し上げておきたいと思います。  現在は、次期財政検証に向けて社会保障審議会年金部会で議論を行っておりまして、年金制度について、国民の皆様にしっかりと安心感を持っていただけるよう努力することが基本姿勢でなければならないと考えております。

○堤委員 持続可能ということですが、それは政府にとって持続可能なんでしょうか。私には、そういうふうに思えます。国民にとっては、これでは暮らしていけないと思っていらっしゃる方が多いのではないかと思います。  また、働く女性が増えれば、納税額も増えますし、年金や医療、介護、労働保険など、社会保険料の財源確保にもつながると思います。ここでは、年金財源の確保という観点から、女性の働き方について質問いたします。  資料一を御覧ください。各国の女性のパートタイム労働者比率です。  (一)の、上のグラフですけれども、パートタイム労働者比率の推移を、二〇〇〇年から二〇一九年まで、およそ二十年間見たものでございます。こちらに赤線で示しておりますが、日本は上昇傾向にあります。そして、(二)パートタイム労働者比率の推移、二十五歳から五十四歳。上は全年齢ですけれども、いわゆる労働年齢に限ったものでございますが、こちらでも、イギリスですとかドイツ、フランス、スウェーデンなどではどんどん下がってきているのに対しまして、日本では、パートタイム、逆に比率が高まってきている、そういう状況です。  それから、資料の二、次のページを御覧ください。先ほど我が党の西村議員からもありましたけれども、男女の賃金格差、この国際比較です。  働く女性は増えましたけれども、しかし、働いている女性の多くがパートタイム、短時間制雇用で、その結果、賃金も低く抑えられているということです。男女の生涯賃金の格差は一億円という推計もあります。男女の賃金格差は、これも西村委員からありました、直接的、間接的な性差別の帰結であり、是正すべきであると考えます。と同時に、年金や社会保険の財源確保という点からも問題だと思いますが、厚労大臣の御所見を伺います。

○武見国務大臣 男女間の賃金の差異というのは、長期的には縮小傾向にはありますけれども、女性の管理職比率の低さや男女間の勤続年数の違いなどを反映して、依然として差異が大きくて、その是正は重要な課題であるというふうに認識をしております。  このため、厚生労働省としては、女性活躍推進法に基づく企業の取組の推進、女性のキャリア形成の障壁となっております性別役割分担意識の是正であるとかアンコンシャスバイアスの解消を図るための取組などを通じて、希望する女性がキャリアを中断することなく、その個性や能力を生かして活躍するための環境整備に取り組んでおります。  御指摘の社会保険の財源確保に与える影響については、格差の是正が雇用者報酬全体の増加につながれば、社会保険料の収入総額を増加をさせて、社会保険の財源のプラスになり得るものと考えております。

○堤委員 財源にプラスになり得るとおっしゃっていただきました。  本当に、OECD諸国の平均が八八・四ですけれども、資料の二ですね、我が国は七七・五で、G7諸国で最低レベルなんですね。こういった状況がずっと続いてきた。先ほど、いろいろ政府はやってきたとおっしゃいましたけれども、この三十年、全然改善していないわけです。  では、女性が他の先進国並みのパートタイム労働者比率になったとしたら、あるいは男女の賃金格差が是正されたとしたら、どのくらい年金財源が増えるのか、試算できますでしょうか。機械的な試算で結構です。よろしくお願いします。

○橋本政府参考人 年金の財政検証におきまして将来見通しを示すに当たっては、恣意的な見通しとならないように客観性を確保することが大変重要でございます。こうした観点から、財政検証における労働力に関する前提につきましては、これまでの実績ですとか、また、独立行政法人労働政策研究・研修機構から公表される労働力需給の推計、この見通しを基に設定してきております。  このため、今年予定しております財政検証におきましても、労働力の前提につきましては、労働政策研究・研修機構による労働力需給の推計等を基に設定することとしておりまして、御提案のような形での試算を行うということにつきましては、恣意的な試算となるおそれもございますので、慎重であるべきだというふうに考えております。  なお、委員がおっしゃったような、短時間労働者の比率の前提を下げるですとか、あるいは男女間の賃金格差を縮小する、こういった前提に仮に置き換えたと仮定した場合にどういうふうな方向での影響が出るかということで申し上げますと、まず、短時間労働者、雇用者比率の前提を引き下げた場合には、フルタイムの労働者が増加をして、厚生年金の被保険者数が増加するということが見込まれますので、これは年金財源の増につながるであろうというふうに考えられます。  また、男女の賃金格差がより大きく縮小するとした場合には、男性に比べて女性の賃金の伸びを大きく仮定するということになりますけれども、男女合計の賃金上昇率の前提が変わらないというふうに仮定すれば、総賃金も増加しませんので、年金財源への影響は基本的にはないということになってくると思いますが、女性の賃金が男性以上に上昇するということによって男女計の賃金上昇率も上昇するというふうに仮定するのであれば、総賃金が増加いたしますので、年金財源の増につながるのではないか、そのような方向で見込まれるというふうに考えております。

○堤委員 今、人手不足ですから、やはり格差がなくなったら男女計の賃金も上がるのではないかと思います。特に、年金の財政検証とは別に、女性活躍推進というふうに政府は取り組んでおられるのですから、それがなぜ必要なのかというその根拠の一つとして、私は、こういった、女性の活躍が本当に実現したら、男女のジェンダー平等が実現したら、どのくらいの財源が生まれてくるのかということを是非検証していただきたいと思います。  委員長、そういった試算をお願いできませんでしょうか。お取り計らい、よろしくお願いします。

○新谷委員長 後刻、理事会で協議いたします。

○堤委員 では、資料三、合計特殊出生率と女性労働力率の推移を見たものです。  もう皆さんよく御存じかと思いますけれども、一九七〇年代、七〇年あたり、今からもう五十年ほど前ですけれども、この頃ですと、女性の労働力率、就業率が高い国ほど逆に出生率が低い。ところが、一九八五年ぐらいからそれが逆転しまして、現在では女性の労働力率が高いほど出生率が高い、そういう相関関係にあるということです。  女性が働きやすい環境を整えることは少子化対策としても重要だということは既に立証済みだと思いますけれども、大臣、国際的な状況にもお詳しいと思いますので、いかがでしょうか。

○武見国務大臣 OECD諸国におきまして、女性の労働力率と出生率との関係については正の相関が見られるとの指摘があることは承知しております。  少子化の背景には、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因がございますが、その中の一つとして仕事と育児を両立しづらい職場環境があって、男女とも希望に応じて仕事と育児を両立できるようにしていくことが少子化対策に資するものだと考えております。  厚生労働省では、希望する女性が出産や育児をしながら働き続けられる社会を実現するために、男女雇用機会均等法の遵守や女性活躍推進法による取組を推進するとともに、育児・介護休業法等において、男女共に希望に応じて仕事と育児を両立できるように、職場環境の整備にも取り組んでいるところでございます。  引き続き、こうした希望する女性が仕事とそれから家庭生活を両立させて、そして、その個性や能力を生かして女性が大いに活躍していただける職場環境の整備をしていかなきゃいけないだろうと思っています。

○堤委員 大臣も御存じだと思いますが、昨年の我が国のジェンダーギャップ指数は百四十六か国中百二十五位と過去最低、前年から九ランクも下がりました。女性の多くが、子育てや介護など、ケア責任ゆえにフルタイムの仕事を続けられない、キャリアを形成できないことが経済や政治分野でのジェンダー平等を阻んでいます。  この三十年、そうやって取り組んできたとおっしゃいますけれども、こういったこと、ジェンダー平等や少子化対策など、自民党に多額の献金ができない女性や子供に関わる問題に政府予算を振り向けてこなかった自民党の責任は大きいと言わざるを得ません。立憲民主党は、長時間労働の是正などの働き方改革、保育、学童、介護などの充実にもっと思い切って投資をすると申し上げて、次の質問に入ります。  次に、食品による健康被害について質問いたします。  日本が機能性表示食品の制度をつくる際に参考にしたアメリカ、米国では、重篤な健康被害の情報を入手してからおよそ二週間以内に政府機関へ報告することを義務づけています。その米国では、ダイエタリーサプリメントの摂取により、数多くの健康被害が生じています。  資料四を御覧ください。  1ですけれども、日本語訳を読ませていただきます。二〇〇四年から二〇二一年の間に、栄養補助食品、ダイエタリーサプリメントの使用に関する合計七万九千二十一件の有害事象が食品安全応用栄養センターに報告されたということです。1は、二〇二三年のイノベーションズ・イン・ファーマシーの記事です。  2の論文です。2の記事です。2は、二〇二二年のアメリカン・アソシエーション・オブ・リタイアド・パーソンズ、全米退職者協会のホームページからなんですけれども、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン誌に掲載された二〇一五年の研究では、ダイエタリーサプリメントによって引き起こされる有害事象により、原文を見ますと二〇〇四年から二〇一三年の間ですけれども、この間、毎年約二万三千人が救急救命室に運ばれていることが判明したと。毎年約二万三千人で、本当に驚きます。研究者らが特定した反応は胸痛や動悸から目まいや嘔吐まで多岐にわたり、六十五歳以上の高齢者はそれらが原因で入院する可能性が高かったということです。  立憲民主党は、五月十四日、今週火曜日に、食品衛生法の改正案を提出いたしました。報告義務、義務づけるものなどなんですが、一方、日本の機能性表示食品の制度は世界一緩い制度であると言われています。アベノミクスの弊害の一つと言われています。報告義務のない日本ではどのくらい被害があるのか、本当に心配になります。  そして、立憲民主党は、機能性表示食品に関する健康被害の情報を速やかに都道府県に報告するよう義務づけるとともに、機能性表示食品の在り方そのものの議論、これも必要だとしております。少なくとも報告の義務化が必要だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○武見国務大臣 食品衛生法第五十一条の第一項で、事業者が講じる公衆衛生上必要な措置としまして、事業者に対して、消費者から健康被害に関する情報を得た場合には、当該情報を保健所に提供する努力義務を課しているというのが現行法の措置であります。  今回の事案というものに関しては、事業者であります小林製薬が医師から健康被害の情報提供を受けた後に、因果関係を含めた自社での評価を行い、一定の結論を得た後に報告を行ったために、約二か月間の間、紅こうじ関連製品の販売、流通が行われていたということは、私どももこれは問題だったというふうに思っております。  その上で、関係省庁とも連携をしながら、再発防止のために、今度は、厚生労働省の立場としては、食品衛生法体系においてどういう施策が必要かというのを今現在検討しているところでございまして、五月末を目途にしてしっかりと結論を得ておきたいと考えております。

○堤委員 参考人の方で結構ですが、アメリカの制度では報告が義務化され、報告を怠れば罰則があると聞いていますけれども、それでよろしいでしょうか。

○大坪政府参考人 食品表示法については消費者庁の所管でございますけれども、今お尋ねの点につきましては、そのとおりだというふうに考えております。

○堤委員 健康被害を防ぐには報告の義務化と罰則が必要だと思いますので、是非よろしくお願いします。  それから、対応の遅れについてですが、四月十日の本委員会において、私は、小林製薬の紅こうじ関連製品を摂取した方々に対し、検査や治療の費用は小林製薬に御負担いただけるのかというふうにお聞きいたしました。御答弁は、小林製薬の方で判断されるものでありまして、厚生労働省の方から何か申し上げるものではないという冷たいものでございました。  その二週間後の四月二十五日、小林製薬は、自社のホームページや新聞紙上などで、当社紅麹コレステヘルプ等の摂取と症状の間に相応の関係性があると疑われるお客様に対して、医療費等の実費のお支払いを開始すると告知されました。実費の支払い対象となるのは、初診料、検査費用、交通費云々ということです。  そもそも、本年一月に小林製薬が外部から、先ほど大臣からもありましたけれども、問題の公表や自主回収に動くまで二か月余りがかかった。この二か月の遅れ、初動の遅れはこの委員会でも何度も指摘されています。しかし、三月二十二日の問題の公表から四月二十五日に検査費用などの実費を支払うという告知をするまで、更に一か月以上かかったわけでございます。これも遅過ぎるのではないでしょうか。厚労省の見解をお聞きします。

○大坪政府参考人 お答え申し上げます。  民間の判断につきまして、厚生労働省から何かコメントということは難しいわけでありますけれども、厚生労働省といたしましては、症状が出ていない方でありましても医療機関に受診をしていただき、その際は保険が適用となるように、三月二十九日の段階で既に皆様に御案内をするなど、被害の拡大を防ぐため取り組んだところでございます。  小林製薬におかれましては、四月二十五日のプレスリリースを拝見をいたしますと、その原因ですとか可能性がまだ分からない中で、暫定的な対応として判断したというふうに記載がございますので、そういった原因究明の進捗などを踏まえて検討されたものと考えております。

○堤委員 遅れたのは確かだと思うんですけれども、それでも、そういう補償をする、誠心誠意責任を持って検討するというふうに明言されています。  しかし、今回の事案では資力のある大きな企業であったわけですけれども、もし健康被害を引き起こした企業が資力のない小さい会社であったとしたら、どうなっていたのでしょうか。一般論で結構ですので、お答えください。

○大坪政府参考人 お答え申し上げます。  国として、所管しております食品衛生法、これは食の安全確保のための必要な規制でありまして、先生御指摘のような被害が発生した場合の補償、こういった趣旨のものではございませんので、そこは国の方では難しいわけでありますが、一般論でということでございましたので、健康被害などが生じた場合には、一般には、民間の共済制度又は民間の保険商品、こういったものを活用されているというふうに承知をしております。

○堤委員 共済があるということですけれども、もう時間がないのでぎゅっとしますが、これはどのくらいの会社が加入しているかとレクで聞いたら、分からないということだったんですね。  ですから、医薬品にはそういう制度が、医薬品副作用被害救済制度があります。しかしながら、食品についてはないわけです。立憲民主党は、こういう健康被害の救済など、抜本的な見直しをすべきとしています。厚労大臣、被害の救済についても法的対応が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

○武見国務大臣 医薬品として分類されているものと食品として分類されているものについては、やはりこうした補償に関わる議論の仕方というのは基本的には異なってくるんだろうと思います。今回のような事案というのは、まさにグレーゾーンの分野における、こうした事案に関わる対応をどうしたらよいかというような議論になっているかとは思います。  ただ、基本的には、やはり医薬品とは異なる立場で食品に関わる食品衛生法というものは、そうした補償までをも組み込んでいるものではないんだということを申し上げておきたいと思います。

○堤委員 食品についても、これまで、森永ヒ素ミルク中毒事件、カネミ油症事件など、食品の摂取を原因とする健康被害が起きています。これらの事案の救済には個別に対応したと聞いています。しかし、個別対応には時間がかかります。その間に被害が拡大したり、救済が遅れてしまうことになります。  例えば、一九五五年に起きた森永ヒ素ミルク事件、武見大臣が四歳くらいの頃に起きた事件だと思いますが、この事件では、乳児百三十人が死亡、一万三千人以上に被害者が出ました。この事件の被害者への恒久的な救済機関が設立されたのは、一九七四年、事件から何と二十年後です。いろいろな、例えば、赤ちゃんが被害に遭っていて、亡くなった方が多いんですけれども、そうでない方もいらっしゃって、その方たちは成人になっているような、二十年という時間が過ぎてしまった。本当にこれは、この間、被害者や御家族はどんな思いで過ごされてきたのか。こんなむごいことは繰り返してはならないと思います。  今後、もちろん被害が起こらないことを望みます。しかし、御紹介しましたように、米国ではサプリによって毎年二万三千もの方々が救急搬送されていたということです。日本でも、今後、何が起こるか分かりません。もちろん、機能性表示食品制度そのものを、安全性を高める、そういったことも必要ですけれども、あるいはその制度自体を廃止するということも私は必要だと思いますが、万が一のために、医薬品副作用被害救済制度のような公的な救済制度をあらかじめ用意しておく必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○大坪政府参考人 お答え申し上げます。  先ほど大臣も申し上げましたが、医薬品の場合には、それを使用せざるを得ない状況において、適正に使用されたとしても副作用が一定程度あるという可能性がございます医薬品の特性というものを踏まえてつくられた制度でございます。また、それに際しましては、製造販売業者から一定の拠出金を、これは毎年拠出をいただいた上でつくられた制度でございまして、食品と、直ちにその性質、必ず召し上がらなければならないものであるといった特性としては、必ずしも一緒ではないというふうに考えております。

○新谷委員長 堤かなめ君、申合せの時間が経過しておりますので、御協力願います。

○堤委員 例えば、大企業には共済を義務づけるなどすることもできるかと思います。いずれにしても、救済が遅れないような制度を考えていただきたいと思います。  時間となりましたので、終わります。ありがとうございました。