2024年 5月 8日:学校現場における「働き方改革」
第213回国会 衆議院 厚生労働委員会 第18号
○堤委員 立憲民主党の堤かなめです。 学校での働き方改革について質問いたします。 今、学校が大ピンチです。資料一、教職員の病気休職者数の推移を御覧ください。平成十三年から令和四年まで、つまり二〇〇一年から二〇二二年まで二十一年間の推移を示したものです。この間、病気休職者は、五千二百人から八千七百九十三人に増加、つまり、およそ二十年で一・七倍に増加しています。そのうち精神疾患の休職者は、二千五百三人から六千五百三十九人に増加、つまり、およそ二十年で何と二・六倍、二・六倍にも増加したということです。 厚労大臣にお聞きします。 働く人たちの精神疾患や過労死を防止することは厚労省の主たる課題の一つかと思いますけれども、教職員の精神疾患による休職者が増加している、およそ二十年で二・六倍にも増加していることについて、率直な御所見をお聞かせください。 〔委員長退席、大串(正)委員長代理着席〕
○武見国務大臣 委員御指摘のこのグラフを見ましても、教職員の病気休職者数の推移というのはやはり深刻な課題として受け止めるべきだというふうに思います。 その上で、公立学校教職員の人事行政状況調査におきまして、精神疾患による教職員の病気休職者数が増加傾向にあることは承知しております。そこで、増加の原因については調査を実施した文部科学省において分析されているものと思いますけれども、労働行政を担当する厚生労働省としても、この状況に対してしっかりと注視をしていく必要がある、このように考えます。
○堤委員 厚生労働省としてもしっかりと注視をしていくということ、必要があるということをお答えいただきました。ありがとうございます。 大臣、過労死ラインを超えると、精神疾患だけでなく、脳や心臓疾患のリスクが高まる、脳や心臓疾患のリスクが通常の二倍から三倍に高まるというふうに言われていますけれども、いかがでしょうか。
○武見国務大臣 労災保険の中では過労死ラインという言葉は使ってはいないんですけれども、発症前一か月間におおむね百時間、それから、発症前二か月間ないし六か月間にわたって一か月当たりおおむね八十時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価をして、労災認定の対象にしております。
○堤委員 やはり、過労死ラインという言葉は使っていないけれども、そういう過労死ライン、百、一か月に八十時間もの残業ですとかが増えると過労死のリスクが高まるということでよろしいわけですね。 文科省が昨年四月に公表した教員の勤務実態調査によりますと、過労死ライン、これは一般に過労死ラインというふうにも言われていると思いますが、それを私は厚労省も認めていただきたいなと逆に思いますけれども、この過労死ラインを超えて働いていた教員が、中学校では三六・六%、小学校では一四%だということです。つまり、中学校では四割弱、小学校では一割弱が過労死ラインを超えて働いている。 この文科省の調査結果、厚労省としても深刻に受け止めるべきと思いますけれども、大臣のお考えをお聞きします。
○武見国務大臣 小中学校の教員の皆さんを含めまして、長時間労働など職場環境を原因として働く方が健康を害するようなことがあってはなりません。 御指摘の調査によりますと、総在校等時間が週六十時間以上となる場合は、小学校で一四・二%、中学校では三六・五%と、全業種平均である八・九%よりも高いものとなっております。教員の環境改善は重要な課題であるということが、こうしたことからも認識されます。 このため、文部科学省においては、働き方改革のほか、処遇の改善、それから学校の指導、運営体制の充実、これらを一体的に進めていく予定であるというふうに承知しております。 厚生労働省といたしましては、過労死等防止対策推進法に基づき策定された過労死等の防止のための対策に関する大綱を踏まえまして、文部科学省や関係府省とともに長時間労働の削減に向けた取組を行っているところであります。したがって、引き続き、こうした観点からしっかり取り組んでいきたいと思います。
○堤委員 教員の皆さんの環境改善にもしっかり取り組んでいくというお答えだったと思います。ありがとうございます。 では、給特法について、関連して聞きたいと思います。 そもそも、この文科省の調査は勤務実態を正確に把握できているのかという強い疑念が持たれています。 資料の二、毎日新聞の記事です。一昨年五月の記事になっておりますが、この見出しには、過酷勤務鮮明に、休憩時間ゼロ、教員の半数、過労死ライン超え、中学七四%、記録書換え要求と記されています。傍線部の1ですけれども、名古屋大学大学院の内田良教授らのグループが小中学校教員に実施した独自調査の結果を公表した、時間外労働では、中学校教員の七四・四%が過労死ラインを超えていたということでございます。 少し調査実施の時期の差はございますけれども、文科省の調査では四割ですけれども、それよりも三割以上多いということでございます。この三割以上の乖離が生じた理由の一つは、この記事にもあります、過少申告ではないかということです。 傍線の2のところを御覧いただければと思います。残業時間を少なく見せるため管理職による勤務記録の書換え要求が横行している、過去二年ほどの間に勤務記録を少なく書き換えるように求められたことがあるかを尋ねたところ、全体の一六・六%が、あると回答ということです。 文科省にお聞きしますが、このような過少申告を把握しているのか、教えてください。
○浅野政府参考人 お答えいたします。 個々の教育職員の勤務時間の把握は、服務を監督する教育委員会の責任の下、適切に行われるべきものであり、文部科学省において個々の過少申告を把握している状況ではございませんが、勤務時間の正確な把握は働き方改革を進めていく上での出発点であり、これまでも、いわゆる給特法に基づき文部科学大臣が定める指針において、ICTの活用等による客観的な勤務実態の把握を服務監督教育委員会に対して求めるとともに、虚偽の記録を残すことはあってはならないと示しております。 さらに、指針のQアンドAにおきましては、万が一校長等が虚偽の記録を残させるようなことがあった場合には、信用失墜行為として懲戒処分等の対象となり得るということも明示させていただいております。 文部科学省としては、引き続き、各教育委員会に対して、文部科学大臣が定める指針の周知や取組状況の継続的な確認を行うなど、様々な機会を捉えて、適正な勤務実態の把握が行われるよう周知徹底してまいりたいと思います。
○堤委員 通告しておりませんが、じゃ、懲戒処分を受けた、そういう学校長とか管理職がこれまでいらっしゃるのかどうか、教えてください。
○浅野政府参考人 今現在のところ、そういった懲戒処分を受けているという者がいるという報告はいただいておりません。
○堤委員 この記事にもありますし、学校現場ではやはりサービス残業が横行しているということは本当によく聞くわけですね。なのに、こういった懲戒処分がゼロということは、やはり文科省の御指導が機能していないじゃないかということになると思います。正確な把握が出発点だというふうにもおっしゃっていただきましたけれども、本当に正確な把握が行われるように、是非もっと文科省としてきちんとしていただきたいということを強く申し上げておきます。 つまり、現場では業務がすごく多くて、それを削減したり教員を増やしたりすることがなくて、時間管理だけが非常に厳しく言われているというようなことで、やはり過少申告、サービス残業が横行するということに結局なっているという、もうこれは全国的にすごく多く声が上がっているところです。 御案内のように、過少申告、いわゆるサービス残業は、一般企業では違法です。労働基準法三十七条には、時間外労働、残業ですね、休日に労働した場合は、割増し賃金を支払わなくてはならないと明記されています。つまり、明確な法律違反であって、懲役六か月以下又は三十万円以下の罰金が科されます。懲戒処分ではなくて、もっと厳しいということですね。しかし、その労働基準法が適用されない教員では、いわゆるサービス残業が、先ほどから申し上げておりますように横行しています。 教員のサービス残業、これをなくすためにどうすればよいとお考えでしょうか。通告しておりませんが、厚労大臣、是非、労働行政をつかさどる大臣として、どういうお考えか、お願いいたします。 〔大串(正)委員長代理退席、委員長着席〕
○武見国務大臣 厚生労働省の立場としては、労働行政を預かる立場でございますから、教員を含む労働者のメンタルヘルスの対策については重要な課題であるというふうに認識をしております。 厚生労働省としても、そうした視点に基づきまして、引き続き取り組んでいきたいと思っております。
○堤委員 では、資料の三を見ていただきたいと思います。月末一週間の就業時間が六十時間以上、これはいわゆる過労死ラインということですけれども、この従業者の割合を産業別に見たものです。そうしますと、一番多いのが運輸業、郵便業の一二・九%、次に多いのが教育、学習支援業の八・九%、三番目に多いのが六・七%の建設業となっております。 この1のところの建設業と2の運輸業、そして3の医師、この三つは、準備期間として、皆さん御承知のように、時間外労働の上限規制の適用が五年間猶予されていましたけれども、来年四月からこの上限規制が適用されるということになります。適用されますと、原則として月四十五時間、年三百六十五時間、上限規制に違反した場合は、先ほど申し上げたように、六か月以下の懲役又は三十万円以下の罰金という刑事罰が管理職に科せられるということになります。 一方、教員にも、残業時間についての上限が月四十五時間、年三百六十五時間以内と指針で定められていますけれども、教員に限っては、先ほど懲戒処分はあるということでしたけれども、罰則はなくて、残業時間に応じた時間外手当も支給されないということになります。 これも、厚労大臣、済みません、通告しておりませんけれども、おかしいと思いませんでしょうか。こういったことで精神疾患や過労死が防げるというふうにお思いでしょうか。
○武見国務大臣 文部行政の方に私はちょっと言及するわけにはいかないのでありますけれども、しかし、労働行政の立場から考えると、先ほども申し上げたとおり、こうした教員、労働者としての教員の健康の管理というのは、メンタルヘルスを含めて極めて重要な課題であって、これらの課題については、引き続き、きちんと管理ができるように取組を進めていきたいと考えております。
○堤委員 資料三にありますように、一番多い運輸業、2のところですけれども、運輸業ですとか、三番目に多い建設業、1のところですが、について、そして医師についても、先ほど申し上げましたように、厚労省が非常に努力して、猶予期間を設けながら上限を規制をしていったということは、すごく厚労省が頑張っていると私は高く評価しております。ですから、同じように、やはり教員についてもそういったことが大事ではないかというふうに思っているところなんです。つまり、労働法が適用されるようにしていくべきではないかと思っているところです。 御存じのように、教員については、休職者が多くて、そしてこういったブラック職場ということがもう学生の間にも知れ渡って、教職希望者が非常に減少しているということなどによって深刻な教員不足に陥っていて、また、教員が来ないからまた過重労働になって、長時間労働になって、そして精神疾患になったりして、またそういう負のサイクルができてしまっているということです。その根本原因は、教員には労働基準法が適用されない、残業代が支払われないとする給特法にあるということだと思います。もう大臣も御存じだと思いますが。 給特法、正式には、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法ということですけれども、教員の職務と勤務態様には特殊性があるとして、一律に給与月額の四%を教職調整額として支給し、時間外勤務手当を支給しないことが定められています。実質的には調整額相当を超える、以上の残業をかなりしているにもかかわらず時間外勤務手当が支給されないことから、定額働かせ放題とも言われている実態があります。 しかしながら、昨年五月の自民党特命委員会の提言及び中教審特別部会審議のまとめでは、教職調整額の一〇%以上への引上げや、担任などへの手当創設などが盛り込まれました。しかし、これでは全く歯止めにはなりません。現場の方々は、給与が少し増えることよりも、長時間労働が是正されること、そして今の膨大な仕事量が減ること、それが大事だと考えています。定額働かせ放題の給特法は廃止すべきだと考えます。 武見大臣にお聞きいたします。 教員が一人一人の子供にゆとりを持って向き合うためにも、また、教職員の心身の健康を守るためにも、給特法を廃止すべきと考えますけれども、大臣のお考えをお聞かせください。
○武見国務大臣 文部科学省所轄の給特法については、私も存じ上げてはおりますけれども、これは厚生労働省の所轄外なので、あえて発言は控えさせていただきたいと思います。 しかし、他方で、厚生労働省としては、教員を含む労働者のメンタルヘルスなど健康管理については、これは非常に重要な課題だという認識は持っておりますので、厚生労働省として、そうした立場から取り組んでいきたいと考えます。
○堤委員 厚労省のホームページには、過労死ゼロを実現するため、厚労省としても、関係省庁と連携を図りながら各対策に取り組んでまいりますというふうに明記されております。是非、文科省とも連携しながら、強く給特法の廃止を大臣からも働きかけていただきたいというふうに思います。 給特法は、一九七一年、五十年以上も前に制定されたものです。言うまでもありませんけれども、この五十年は、高度成長、バブル経済、そしてバブルが崩壊して、日本社会は大きく変わったわけでございます。子供たちの状況も変わっておりますし、不登校も増えたり、子供たちの自殺も増えたりという状況で、子供たちを囲む社会環境、教育の在り方、学校の役割なども大きく変わりました。学校での働き方も根本から見直すべきだと思います。 また、中教審特別部会は、業務削減については、業務移行の推進、PDCAサイクルの構築、見える化を進めるとしていますが、実効性ある業務削減策は示されていません。教職員定数改善については、教科担任制の小学校中学年への拡大、スタッフ職の拡充にとどまっています。本年度予算においては、二年前倒し分、三千八百人が措置されましたけれども、既存の学校数あるいは学級数からすると、高学年でさえもまだ充足されていません。中学年の措置の前に、まずは小学校高学年の措置を確実にする必要があるということも指摘させていただいておきます。 次に、授業時数の削減についてです。 これは文科省にですけれども、標準授業時数を最低時数と捉え、標準授業時数を上回らなければならないというふうに捉えている学校も多いと聞いていますが、そうなのでしょうか。 また、小学校では、どの学年でも標準どおりに設定しているのは四割前後にとどまっていまして、五割強が標準を上回る設定にしているという実態もあるというふうに聞いております。学校現場の現状を鑑みれば、授業時数の標準ではなく上限、厚労省も労働時間を上限としていますけれども、やはり上限を決めないとずるずると増えてしまいますので、上限を文科省としてきちっと示す時期に来ているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○あべ副大臣 委員にお答えさせていただきます。 御指摘いただきました標準時間時数に関しましては、学習指導要領で示している各教科等の内容を指導するために必要な時間でございまして、計画段階でこれを下回って教育課程を編成することは適当ではございませんけれども、他方で、例えば、年度末の段階で標準授業時数を必ず上回らなければいけないという認識も一部で生じているところでございます。 このため、文部科学省といたしましては、教育課程の実施段階におきまして災害や流行性疾患による学級閉鎖などの不測の事態も生じることでございますので、こうしたことによって標準時間時数を下回った場合においても、このことのみをもって法令に反するものではない旨、都道府県教育委員会に対してお示ししているところでもございます。 また、総時間時数を含む教育課程につきましては、各学校の判断におきまして編成すると同時に、また、学校を設置、管理する教育委員会等におきまして適切に状況把握を努めていただくものでございますけれども、現に標準の時間時数を大きく上回って教育課程を編成している学校が一定数存在するという状況も確かにございます。 このため、文部科学省といたしましては、令和五年九月に、全ての学校に対して授業時数の点検を要請すると同時に、また、特に年間一千八十六単位時間以上の教育課程を編成している場合におきましては、見直すこと、これを前提に点検を行いまして、指導体制に見合った計画とするよう通知をしたところでございます。 各学校におきましては、こうしたことや学校指導要領の規定を踏まえつつ、学校や地域の実情に応じて、創意工夫を凝らした教育課程を編成していただきたいというふうに考えているところでございます。
○堤委員 通知も出して、大きく上回って教員や子供たちが負担にならないようにしてくださっているということをお聞きしまして、少し安心いたしました。 福岡県では宗像市と福津市が、予備時数をゼロにする、つまり、標準授業時数を上限とするというようなことも明言したというふうに聞いています。やろうと思えばできるということだと思います。予備時数ゼロを基本とした教育課程の編成を基本とすべきだと思っております。 また、小学校では、週二十六こま以上を受け持つ教員が四割以上とも聞いています。教員一人当たりの持ち時間数についても上限を設定すべきと考えますが、いかがでしょうか。
○あべ副大臣 委員にお答えさせていただきます。 令和四年度の教員勤務実態調査の結果におきましては、授業の持ちこま数は多いが受け持つ児童生徒数は少ない場合においては在校等の時間が短くなるなどの、教師の勤務負担を持ちこま数だけで測ることは十分ではないといった課題があるというふうに認識をしているところでございます。 このため、授業の持ちこま数におきましては、国が一律に上限を設けるのではなく、特定の教師に過度な負担が生じないよう、例えば、持ちこま数が多い教師にはその他の校務の所掌を軽減するなど、各教育委員会や学校の実情に応じて柔軟に対応すべきものというふうに考えているところでございます。 一方で、授業の持ちこま数の軽減を図ることは重要な課題と認識をしているところでございまして、特に授業の持ちこま数が多い小学校におきましては、教員定数の改善によりまして教科の担当制を進めているところでございまして、令和六年度予算に関しましては、当初予定いたしておりました令和七年度までの二か年分の改善数を前倒しして盛り込んだところでございます。 文部科学省といたしましては、引き続き、教育の質の向上に向けて、学校における働き方改革の更なる加速化、また処遇改善、学校の指導、運営体制の充実、教師の育成支援を一体的に進めてまいります。 以上でございます。
○堤委員 私は、週二十六こまと聞いて、本当に何かくらくらする気がしました。といいますのは、私は大学の教員をしておりましたときに、武見大臣もそうですが、週二十六こまとか考えられない、週三こまでした。もちろん、九十分授業ですので、一つが小中学校では二こまぐらいになりますので、六こまぐらいだと思います。そういう、こま数をどうするかというのは、大学の教員にとっては非常に大きな課題で、週二十六こま、つまり大学の教員なら十三こまということになりますが、ちょっとこういうのはあり得ないなというふうに思ったりしましたけれども、授業を受ける子供たちの負担も無視できません。 東京学芸大学の大森直樹教授が昨年、公立小学校の教員を対象に行った調査の自由回答には、一日六時間の授業に苦痛を感じる児童もいる、六時間目は集中力もなく、形だけの学習になりがちだと思う、授業時数が多ければ学力が伸びるものではないといった意見が寄せられています。 子供たちと教員の心身の健康のためにも、授業時数の上限をまず設定し、その時数に合わせた教育内容と量に見直していただきますように強く要望し、質問を終わります。 ありがとうございました。