2025年 4月 2日:子宮頸がん検診の受診率の向上、保育の質の向上
第217回国会 衆議院 厚生労働委員会 第6号
○堤委員 おはようございます。立憲民主党の堤かなめです。 二十五分の質疑の時間をいただき、ありがとうございます。 まず初めに、子宮頸がん検診の受診率の向上について質問いたします。 お手元の資料一を御覧いただきたいと思います。これは、子宮頸がん検診の受診率を国際比較したものでございます。一番左から高い順になっておりますが、一番左のオーストリア、そして二番目のスウェーデン、こちらでは八割近い受診率となっております。ところが、日本は四三・七%、およそ四割にとどまっています。先進国の中で最低レベルということになろうかと思います。 また、資料の二を御覧いただきたいと思います。これは、北海道大学の特任講師ハンリー氏による論考でございます。 下線部の1を読ませていただきます。子宮頸がん検診の有用性は科学的に検証されており、検診プログラムの成否を決める最も重要な要素は検診受診率である、二〇〇七年に成立したがん対策基本法では、がんの早期発見のためにがん検診受診率五〇%を掲げている、しかし、子宮頸がん検診受診率は四〇%にとどまっている。 下線部2を読ませていただきます。自己採取HPV検査は受診者の心理的負担が少なく、在宅で実施可能であり、受診施設がない地域でも可能な感度の高い検診方法である、自己採取法が医師による採取と比較して劣らないことを示す証拠が増えてきており、自己採取法の普及には絶好のタイミングであると言えるとあります。 そこで、お聞きしたいと思います。 我が党の早稲田ゆき委員についても、質問主意書を提出して、この自己採取法を普及すべきだという立場でございますが、女性の健康を守るためにも、自己採取法の普及などを含め、子宮頸がんの検診率を高めるべきと考えますが、いかがでしょうか。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。 子宮頸がん検診につきましては、国立がん研究センターのガイドラインでHPVの検査単独法が推奨されましたことを受けて、HPV検査の単独法を令和六年の四月から導入をさせていただいております。 先生御指摘のHPV検査自己採取につきましては、受診率向上は期待されますものの、この国立がん研究センターのガイドラインの中では、安易な自己採取の普及は精密検査の受診につながらず、期待した効果を発揮できない可能性が高いこと、また、自己採取法の導入を検討する場合には、受診率だけではなく、精密検査の受診率をアウトカムとした普及と実装研究の結果に基づき議論すべきであるとして、現時点においては医師の採取が原則というふうにされているところであります。 このため、現時点では自己採取法の導入は困難でありますが、厚生労働省としては、検診の受診率向上のため、市町村が実施する郵送や電話などによる個別の受診勧奨、再勧奨、また、がん検診のクーポン券の配付等への支援、また、企業向けセミナーの開催、企業が行う従業員へのがんに関する情報提供の支援、加えて、受診率向上に効果的な取組につきまして具体的な事例を紹介をした受診率向上施策ハンドブック、この公表などを行っております。 引き続き、御指摘の子宮頸がん検診の受診率向上のため、各種取組を進めてまいりたいと考えております。
○堤委員 まだ自己採取法というものがあるということを知らない方も大変多いと思います。また、二〇二四年の研究報告書では、自己採取法が検診受診率を向上させることを明らかにした我が国初の調査だということも言われております。その後の精密検査につながるかどうかというところは、手紙を出すとか電話をかけるとかで、そこはまた、自己採取法をしてからその次の段階かと思いますので、まずは自己採取法があるということ、これを含め周知していただくこと、そして、それが可能となって受診率を高めるということが大変重要だと思っています。 二〇〇七年に受診率五〇%を掲げていたのに、それから二十年たってもまだ達成できていないというこの状況を打破するために、早期に有効な対策をお願いいたします。 次に、保育の効果と保育の完全無償化についてでございます。 資料三を御覧いただきたいと思います。これは、エコチル調査の結果の記事でございます。エコチル調査に参加した約四万人のデータを解析し、保育施設の利用と子供の発達について調べた結果、一歳未満から保育施設を利用していた子供は、三歳まで保育施設を利用しなかった子供に比べて、三歳時点で発達がよいということが明らかになりました。コミュニケーション、全身を使う粗大運動、細かい作業の微細運動、問題解決能力、着替えや食事、順番待ちができるなど、個人社会スキルの五分野全てで、三歳児時点では、保育施設に通う子の方が発達の遅れとされる割合が少なかったという結果となっています。 また、資料四、こちらは東京大学大学院教授の山口慎太郎氏の論考でございます。百六ページを御覧いただけたらと思います。 下線部の1です。PPPとABCという調査がアメリカで行われております。PPPというのはペリー幼児教育プロジェクト、ABCはカロライナ幼児教育プロジェクトでございます。この二つの結果、高校卒業率を二〇から五〇%ほど上げ、三十から四十歳時点での就業率や労働所得を上昇させた一方で、社会福祉利用率を下げ、警察に逮捕される回数を減らすなど、様々な成果を上げていることが明らかにされたとあります。 また、下線部2、その下の方ですが、具体的には、幼児教育が外在的問題行動を減らしたことが、将来の暴力犯罪への関与や警察による逮捕を四〇%、失業を二〇%、それぞれ減らすことにつながったことが明らかにされたとあります。 また、少しめくっていただいて、百十五ページです。先ほどの二つの研究は小規模なアメリカでの研究でございますが、公的な大規模幼児教育プログラムが子供たちに与える影響を評価した研究というのもなされておりまして、日本、スペイン、ドイツでは、子供たちの社会情緒的能力の改善や問題行動の減少が報告されている、学力に与える影響とは異なり、社会情緒的能力に与える影響は長期的に継続することを示す研究があり、幼児教育が子供の人生を変えているのは、学力ではなく社会情緒的能力を通じた影響であるということが示唆されているわけでございます。 そこで、厚労大臣にお聞きしたいと思います。保育が厚生労働施策とどのように関連するとお考えなのか、御見解をお聞かせください。
○福岡国務大臣 保育を始めといたします子育て支援施策の充実については、共働き、共育ての推進であったり、全世代型社会保障の構築など、厚生労働省が取り組む政策にも様々な関連性や効果を持つものと考えております。 具体的には、男女共に希望に応じて仕事と育児を両立できる社会の実現に向けましては、地域における安心して子育てできる保育提供体制の整備と、厚生労働省として取り組んでございます職場における仕事と育児の両立支援制度の充実を、車の両輪として進めることが大変重要だと考えています。 昨年七月に公表いたしました二〇二四年財政検証の結果では、前回の二〇一九年と比較して年金財政の改善が確認され、この主な要因の一つに、両立支援制度や子育て支援の充実等を背景といたしました近年の女性の労働参加の進展があるというふうに考えています。 こうしたことも踏まえながら、引き続き、こども家庭庁と連携しながら、各種施策の推進に取り組んでまいりたいと思います。
○堤委員 保育サービスは、子供たち本人だけでなく、保護者にも社会的な効果をもたらすということかと思います。保護者の就労率が上がるということは、保護者の人生の選択肢が広がるというだけではなく、税金や年金、社会保険料を支払う側になるということで、大臣がおっしゃったように社会全体に利益があるということかと思います。 では、資料五を御覧いただきたいと思います。これは、この図を見ていただきたいんですけれども、人への投資の効果についてです。人への投資、これは立憲民主党が強く求めてきたものでございます。この図は、ノーベル経済学賞を受賞したヘックマン教授の著書を引用したもので、人的資本への投資はとにかく子供が小さいうちに行うべきとしています。 そこでお聞きしたいと思いますけれども、ゼロから二歳を含む幼児教育、保育、これの更なる負担軽減、支援の拡充について三党合意が得られたというふうに思っておりますけれども、具体的な施策は示されておりません。私は、人的資本への投資はとにかく子供が小さいうちにすべきという知見があるわけでございますから、幼児教育、保育の無償化を是非進めていただきたい、具体的な施策を示すべきと考えますけれども、いかがでしょうか。
○竹林政府参考人 お答え申し上げます。 今先生に御指摘いただきました自民党、公明党、日本維新の会の三党合意では、ゼロから二歳児を含む幼児教育、保育の支援につきまして、更なる負担軽減、支援の拡充について、論点を整理した上で十分な検討を行い、その結果に基づき成案を得ること、あるいは、地方の実情等を踏まえ、令和八年度から実施することが盛り込まれているものと承知をしております。 政府といたしましては、今後、三党とも連携しつつ、引き続き取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○堤委員 では、次に、保育の質の向上について聞きたいと思っております。 保育の量的拡大が一段落した今、保育の質の向上が課題となっています。資料四の中でも、十分な質の確保ができていない施設に子供を預けることは、子供の発達にとってむしろマイナスになるという記述もあります。保育の質の向上には、保育園の経営の安定が大前提となります。 ところが、保育園の経営は少しでも定員割れになると急に大幅な赤字になり、途端に経営が苦しくなります。なぜならば、国の公定価格が、固定費も含め子供一人当たりで決定するという構造的な要因があるからです。とりわけ、ゼロから三歳までの小規模保育園では、年度初めに数名の定員割れが生じただけでも、小規模ですので経営が苦しくなり、年度途中で定員が埋まれば一息つくことができますけれども、今度は年度途中で小学校入学まで預かってくれる保育園に転園することも多く、常に定員割れの危機、経営の危機の中に置かれているような状況になっているということを聞いております。そうなりますと、経営者としては、保育士の配置を手厚くしたり処遇をよくすることにもちゅうちょせざるを得なくなってしまいます。 少子化で子供の数が減少する中、経営の安定化を図るという観点から、公定価格の在り方を根本的に見直すべきと考えますが、いかがでしょうか。
○竹林政府参考人 お答え申し上げます。 公定価格につきましては、利用児童数に基づいて配置すべき職員数が決まることから、利用児童数に応じて支払われる仕組みとなっております。また、先生御指摘いただいたような固定費も念頭に置いてつくってきていますので、定員規模が小さいところの方が単価は高い、そのような仕組みにしております。 保育所等の利用児童数に定員割れが生じている場合などには、適切な利用定員に見直していただくことが必要だと考えております。このため、市町村におきまして、事業者との意思疎通を図り、その意向を十分に考慮しつつ、その施設での最近の実利用人員の実績あるいは今後の見込みなどを踏まえ、適切に利用定員を設定していただく、見直していただく必要があるというふうに考えております。 その上で、こども家庭庁といたしましては、令和七年度の予算におきまして、定員六十人以下の保育所等に係る定員区分を従来の十人単位から五人単位に細分化したところであります。これによりまして、利用定員より利用子供数が少ない場合に生じる給付費収入の減少分を軽減することとしております。さらに、今年度から施行される見える化におきまして、経営情報の分析を行いながら、今後も適切に公定価格の設定を行ってまいりたいと考えております。 また、保育所等の多機能化を進めていくということも保育機能を維持していくための一つの方策であると考えておりまして、先進事例に関する調査研究や過疎地におけるモデル事業の実施等も進めているところです。 このような取組によりまして、少子化が進行する中でも持続可能な保育提供体制を確保するため、保育所等の安定的な経営の確保に努めてまいります。
○堤委員 また、保育士不足も大きな課題となっています。国会では、何年も前から野党の議員が入れ替わり立ち替わり待遇改善を求めてきました。それなのに、一向に保育士のなり手を増やすための有効な手段が取られていないという嘆かわしい状況でございます。 我が党の奥村政佳参議院議員も指摘していますが、保育士は一人の採用枠に〇・三人しか来ない。応募した人全員を採用してもまだ全然足りないということになっております。超保育士不足ということかと思います。これは保育の質にも大きく影響いたします。 保育士不足の最大の要因は、賃金の低さです。二年前、二〇二三年時点で全産業平均が三十七万、保育士が三十二万と、まだまだ、およそ五万円も低いという状況です。早期に、まずは全産業平均を上回るべきだと考えますが、いかがでしょうか。
○竹林政府参考人 お答え申し上げます。 先生御指摘のとおり、保育の質の確保、向上の観点からも、また保育人材の確保の観点からも、保育士の処遇改善は極めて重要であるというふうに考えております。 保育士等の処遇改善につきましては、令和六年度補正予算では一〇・七%の大幅な改善を実施し、七年度の予算におきましても、財源を確保した上でこれを反映しているところでございます。仮に、各現場でこの水準の賃上げが行われた場合、平均賃金を用いて機械的に計算いたしますと、三万円を超える改善となります。また、こうした六年度の取組を含め、平成二十五年度以降では累計で約三四%の改善を図ってきているところでございます。 保育士の処遇改善につきましては、こども未来戦略に位置づけるとともに、昨年十二月に公表した保育政策の新たな方向性におきまして、保育士の処遇改善に係る今後の目標といたしまして、他職種と遜色のない処遇の実現を掲げており、取り組むこととしております。 今後も改善状況を注視しながら、引き続き、こども未来戦略に基づき、民間給与動向等を踏まえた更なる処遇改善を進めてまいります。
○堤委員 どうぞよろしくお願いします。 でも、もう既に保育士は給与が低い、待遇が悪いというイメージが広がってしまっています。これを払拭し、保育士を目指そうという若者が増えるためには、全産業平均を上回ること、これが最もインパクトがあるかと思います。一層の取組をお願いいたします。 また、保育士の確保のため、ほとんどの都道府県で、保育士として五年勤務することで返済が免除される奨学金、保育士修学支援貸付事業を行っているということです。そこで、私の友人で、高校で長年進路指導を行っている友人に聞いたところ、そうなの、知らなかったという答えでした。また、すぐに学校の中を回覧してくれたんですけれども、やはりみんな知らなかったと、その高校の先生たち含めてですね。 一方で、看護学生を対象とする同様の奨学金、卒業後、一定期間働くと返済が免除される制度については、その友人もよく知っていました。看護学生対象の制度は、収入状況の証明が不要で、比較的誰でも借り入れられるなど、使い勝手がよいということもあり、奨学金を利用している学生が半数近くを占めています。 そこで、保育の養成学校に通う学生では利用率がかなり低いと聞いていますけれども、利用率はどのくらいなのか、お聞きいたします。 その上で、経済的に厳しい環境にある高校生にとって、このような奨学金があるということを高校入学時から知ることができれば、将来に夢が持てる、大学に行くのは厳しいなと思っていた高校生の人たちが、大学に行けるという高校生も多いのではないかと思いますが、高校入学時から周知する仕組みや、もっと利用しやすい制度にするなどの取組をお願いできませんでしょうか。
○竹林政府参考人 お答え申し上げます。 保育を支える人材の確保は喫緊の課題であり、保育士を目指す学生が、経済的な事情にかかわらず、保育士養成校で学ぶことができるような環境の整備が重要と考えております。 このため、今先生に御指摘をいただきましたように、保育士養成校に通う学生の経済的負担軽減のため、修学資金の一部として、学費月額五万円等を貸し付け、卒業後、五年間実務に従事していただくことで返還を免除するという修学資金貸付けの仕組みを用意をしております。 先生お尋ねの利用率につきまして、直近データの令和五年度では、全国で四千三百八十六人の学生に貸付けを行っているところです。これをこの年度の保育士養成校に入学した学生で割りますと、およそ一三%ということになります。 先生御指摘のとおり、本貸付事業を必要とする学生が確実に支援を受けることができるようにすることは、大変重要というふうに考えております。そのために、効果的な周知方法や利用しやすくなる手続上の工夫につきまして、関係省庁とも連携し、検討してまいります。
○堤委員 ありがとうございます。 保育の効果についてなんですけれども、人生百年時代です。三歳までの投資でおよそ百年効果がある、こんな得な話はないと思います。生涯労働所得が上がり、納める税金や社会保険料が増える、犯罪が減少すれば、犯罪者を逮捕し、裁判をし、刑務所に送るなど、司法警察活動に関わる費用が削減される、さらには社会福祉の利用が減少するなどです。もちろん、保育だけではなく、初等教育、中等教育の投資も、先生方の働き方改革、給特法の廃止なども含め、早急にすべきだと考えております。 一般に、私、社会学者の端くれでございますが、社会科学では、倫理的な問題から、社会の場において実験を行うことは困難でございますし、仮にそのような問題をクリアしたとしても、諸条件をコントロールすること自体が困難であり、社会実験や社会調査で一〇〇%の確証を得るというのは難しいわけです。そもそも社会科学は、自然科学のように客観的な証拠に基づき真実を明らかにするのではなく、説得的な論拠により、真実らしさを明らかにすることを目指すものであります。 私は、保育が大きな効果があるというのは日本においても現時点でも十分真実に近いと考えておりますので、是非とも保育、教育への更なる投資をお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。 ありがとうございました。